Guideboard

医療崩壊 / 逃散 2 / 検証医師不足第 2 部 (1)

Posted by guideboard on 2007/10/09/Tue

» 医療崩壊 / 逃散 2 / デーリー東北新聞

デーリー東北新聞
(1) ルポ 40 時間 「仮眠は 1 時間くらい」 2006.3.24

三月のある日午後三時半。八戸市民病院の血管撮影室で循環器内科の長谷川一志医師(34)は、他の医師らと心臓カテーテルの手術に当たっていた。細い血管を傷付けないよう細心の注意を払う。高度な技術が必要だ。長時間の手術から、目は既に充血していた。

■ぎりぎりの人手

「高度医療に携わることができ、やりがいがある。しかし、勤務内容は厳しい」。医師になって九年目の長谷川医師は弘前大学医学部からの派遣医。同病院に来てもうすぐ一年。同診療科一番の若手で、体力的に最も無理のきく年齢だ。
同病院は八戸広域圏の高度医療を担う拠点病院に位置付けられる。心臓カテーテル手術ができる医療機器と技術を持つ医師を備えることから、市外や県外からも患者が集中する。
「先週は二、三回呼ばれたかな」。緊急性が高く、迅速な処置が必要な患者も運ばれて来る。帰宅後でも、時間を問わず呼び出しがかかる。
当直は月に二回ほど。日勤から当直、当直明けですぐに日勤。年中このローテーションが続く。「土日関係なく毎日病院に来ていて、十分に休みも取れない」。
循環器内科の常勤医は四人いるが、広域圏の来院患者に対応するには絶対数が足りない。増員したいが、全県的な医師不足で確保は困難。ぎりぎりの人数での過酷な労働が恒常的になっている。
手術後、長谷川医師は休む間もなく午後五時から当直勤務に突入。「容体が急変することがあるから」。救命救急センターの急患室と入院患者らの間を何度も往復する。
急患が途切れた午後九時四十分ごろ、診察室で長谷川医師はいすにもたれ、ひと息ついていた。「あ、遠い目してる。先生は明日も普通に仕事なんですよね」。看護師が少し離れた場所から気遣う。朝から働き続け、夕食を取る間もなく夜が更けていく。
時計の針はもうすぐ午前零時。電子カルテの作成中、疲労のたまった目元を手のひらで軽く押さえた。「仮眠は三時間取れたらいい方。たいてい一時間くらい」。午前四時、ようやく仮眠室で眠ることができた。

■一日でげっそり

外来診療に備え、午前七時すぎに起き、朝食を取らずに同センターの入院患者の元へ直行。容体を確認し、必要な処置を看護師に指示する。
午前九時半には外来診療が始まった。待合室では既に大勢の患者が順番待ち。「先生はいつ食事をしているんでしょうね」。看護師が、ふと口にした。
やっと外来診療を終えたのは、午後零時半すぎ。昼食もそこそこに一時からカテーテル手術へ。約五時間ぶっ通しで四件の手術をこなす。夕方、マスクを外すと、ほおはげっそり。「脱水症状だ」。すぐに水分補給に向かった。まだまだ勤務は終わらない。

■患者への思い

前日から連続約四十時間の勤務。少しでも気を抜くと体に力が入らなくなる。「自分を必要としてくれる人がいる」。年中無休の激務に耐えられるのは、患者への思いがあるからだ。
理想は「患者さんの立場に立った仕事」。しかし現実は「時間が限られていて、患者とじっくり向き合う余裕がない」。ジレンマを抱えている。

◇   ◇   ◇

“待ったなし”となっている公立病院の勤務医不足問題への対応。人手が足りずに過重勤務となる悪循環を生み出し、結果的に開業を選択する医師も多い。なぜこのような状況に陥ってしまったのか。第二部では勤務医の実態に迫る。
(地域医療取材班)

Leave a Reply

XHTML: You can use these tags: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <pre> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>