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JBM / 割箸事件

Posted by guideboard on 2007/10/08/Mon

本記事の原典は、2006 年 3 月 30 日、http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/03/post_e054.html にアップされた。原典は削除された。


キーワード
わりばし、割箸、割り箸、割ばし、割りばし、杏林、咽頭、頭蓋、穿通、業務、過失、致死、過誤、事故、東京地裁

2006.3.28、先週の日航機ニアミス事故管制官無罪判決に続き、東京地裁で重要な判決があった。

被告医師の無罪判決であるが、後顧に憂いを残すような残念な判決であった。

本判決では、
1. 大変稀な外傷に対する過失を認定した。
2. 付言として、被告医師への非難批判がコメントされた。
3. 後頭蓋窩穿通外傷の受傷の瞬間に患児の生命予後は決まっていたと、裁判所も ( 数多くの医師も ) 考えている。

—–

1.
本事件発生以来、医師は誰もが頭蓋穿通外傷に思い至らなくても無理はない、自分でも気付かないだろう、とのコメントが数多く上がった。実際、咽頭の外傷で後頭蓋窩まで穿通する事例は大変稀である。
後頭蓋窩に残った割箸の可能性を考えることができるかどうかは、大変困難である、ということなのだ。

なぜ、過失があると言われなければならないのだろうか。

本件のような外傷よりも、もっとありふれた、それでいて危険性の高い外傷は日常茶飯事だ。日本中の医師が、どこかで地雷を踏む可能性があるのだ。どんなベテランが、どんなに注意を払っていても、本件よりももっとありふれた事例で見逃しが起こり得る。そのリスクを下げる努力は必要だが、ゼロにはならない。
判決の付言にあるような、「患者の病態を慎重に観察し把握するという医師として基本的、初歩的な作業」を怠らなくても、事故は起こる。

2.
判決の主文以外のところで被告医師を非難して、何になるのだろう。
裁判官は、法律と、原告被告の双方が提示する証拠とから、純粋に法理に基づいて判決を出す。だけど言いたいこともあるんだよ、という事なのか。
福岡地裁・大阪高裁靖国神社参拝訴訟でもそうだが、あとからひっくり返せないコメントを判決文に残すのは、構わないのだろうか。この判決の付言に書かれている事は、被告医師の過失については当たらない。遺族に哀悼の意を表したいなら、それだけを言えばよい。

また、刑事無罪の判決なのに、民事訴訟に何らかの影響があるだろう。

3.
遺族の心情は推し量ってあまりあるものだ。いまだに大変深い悲しみの中にあるのだ。誰かが悪いのか、何が悪かったのか、真実はどこにと、求めているのだ。刑事、民事とも裁判に真実究明を期待する事に無理はない。期待通りにはいかないかもしれないが。
しかし本件のように、けがした瞬間に生命予後が決まるようなケースで、はたしてどういう事実が示されたなら、遺族は真実を知り得た、と納得できるのだろうか。

医学的には、けがした瞬間に助からない、だ。だがそれでは納得ができないのなら、人間の知恵でできる事は、純粋な医学的究明と再発防止策の開発、それと無過失でも救済、しかないのではなかろうか。

—–

本判決を見て考える事は、
1. 司法が医療事故の真実の究明と再発予防策に資することは、乏しい可能性である。
2. 裁判官が判決と関係ない意見を付け加えるのは、いかがなものか。

———-

医療事故の報道の際、必ずどこかの権威あるらしい医師が出てきて、自分は経験したことがある、自分ならこんな結果にはならない、などとコメントする。
本件ではこのようなコメントが出されていた。
大変稀な事例を 1 – 2 回経験した、それがたまたまうまく行った、という事に普遍性はない。

早川徹 元大阪大学脳神経外科教授
「私だけで二例体験してます。二例とも準三ちゃんと同じくらいの男の子で私の場合X線撮影で刺さった割り箸片を発見し、抜き取りました。脳下垂体にまで達してました。こういう例は昔からよくあって、救急外来にいたら知っておくべきでしょう。知らないでは済まされません。」

玉木紀彦 神戸大学脳神経外科教授
「見逃した医師はよほど知識がなかったか、知っていたのにうっかり見逃し病院くるみで隠したか。」

日本中の医師が、脳神経外科専門医でなくても、この両人と同じレベルの知識を持ち合わせるほど、割箸による後頭蓋窩穿通外傷はありふれた外傷、な訳ではない。
また、簡単に抜き取ったというが、それほど危険な行為はない。静脈洞を貫いていたら、抜いた途端即死だろう。整形外科医である私にでも分かる。

この両人のような不用意なコメントが、患者家族も、被告医師もさらに不幸にし、検察、裁判所をも迷わせるのだ。

参考リンク

不当起訴された耳鼻科医を支援する会

参考資料

JBM / 割箸事件資料 1
JBM / 割箸事件資料 2
JBM / 割箸事件資料 3
JBM / 割箸事件資料 4
JBM / 割箸事件資料 5
JBM / 割箸事件資料 6
JBM / 割箸事件資料 7
JBM / 割箸事件資料 8

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