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JBM / ガリレオ裁判 2

Posted by guideboard on 2007/10/07/Sun

本記事の原典は、2006 年 9 月 13 日、http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/09/_2_fa7a.html にアップされた。原典は削除された。


キーワード
医療訴訟、医事紛争、医療事故、医療過誤、医療ミス、科学、裁判、テオフィリン中毒、出血性ショック

亀田総合病院事件の続報

喘息に対するテオフィリンによる治療を行っていた患者の、当該医療機関でのフォローアップ中には、テオフィリンの血中濃度は治療域内だったはずだ ( そうであると伝え聞く )。それゆえ、そのまま投薬加療が続けられていたのだろう。それなのに何らかの理由でテオフィリンを既定量以上に大量に内服したと考えられる ( これもそうだと伝え聞く )。

それだけから類推できるストーリーは、

1. テオフィリン中毒による痙攣、心不全、そして出血傾向かあるいは重責する痙攣に続発するミオグロビン尿があった。出血傾向により血尿があったというより、ミオグロビン尿の色をして血尿としているのかもしれない。テオフィリン中毒は、必ず疑うはずだから、血液や尿の検体が採られているだろう。ミオグロビン血症、尿症が分かっているはずだ。判決でもテオフィリン中毒の存在を認めている。

2. ソケイ部から血液浄化用の脱血走血のダブルのカテーテルを大腿静脈に挿入しようとしていたのだろう。テオフィリンを透析によって体外に排除するためだ。テオフィリン中毒なら唯一の解決法だ。横紋筋融解症が起こっていてミオグロビン尿となっていたら、それも透析でないと救命できないだろう。

3. ソケイ部穿刺は、ソケイ靭帯より近位で動脈穿刺をしたら後腹膜血腫を来す可能性があるが、出血傾向がない限り、致死的なものとなることは少ない。ダブルのカテーテルはガイドワイヤーで挿入するだろうから、試験穿刺針で動脈穿刺となってもそんなに出血しないだろう。若い人だから血管壁が脆いこともなかっただろう。動脈を傷つけたことが、剖検などで分かっていれば、判決はそれを理由にするだろう。ダブルのカテーテルを動脈に誤挿入する可能性は著しく低い。大体、そんなに太いものは動脈に入れようとした途端に著しく挿入しにくいことで気付くか、まず挿入できない。

3-2. ソケイ靭帯より近位での静脈穿刺では、動脈と較べてなおさら出血多量となる可能性は低く、カテーテル穿孔などが起こるしか、多量の後腹膜出血は起こりにくいだろう。ダブルカテーテルそのものが血管壁を破ることがあれば、それはカテーテルの方に問題がないか。

3-3. 静脈、この判決では大腿静脈を指しているのだろうが、判決では静脈などを傷つけたためとしたと報道されている。「静脈など」と言うだけで、出血部位、出血原因が明らかでないようだ。解剖で出血原因や部位が分かっているなら、そう書くはずだ。

3-4. 静脈損傷としても、それでどうやって血尿に結びついて、その血尿で出血性ショックになるのだろうか。静脈内カテーテル挿入と血尿に因果関係が成立する可能性は著しく低い。

医師の一人としてこう考える。どっちにも取れる推測というのは混じっているが、医学という科学に照らして、明らかな誤謬、不合理があるだろうか。

———-

剖検によっても真の死因が分からないこともある。本裁判でそれが争われている。ならば救命救急の最中に、剖検でも分からなかった事態が進行している、その真実を即座に見抜かなければならない義務はない。

剖検も、科学的検証も含め、医学には三つの意味で限界がある。

一つは、現代医学でも分からない、病める人を助けられない事態は、日常どこででも起こりうるのだ。

もう一つは、科学は万能ではない。科学ですべてが判明するということは有り得ないが、神ではない人間が真実に近づく手段は、科学しかない。

最後の一つは、科学である医学を社会に適用する時、法がある。その法 ( ここではその執行者である法曹 ) が医学を束縛し、変形させるのだ。

上記の最初の項で言うところの、医学の限界があるということを、人は知識として知っていても、我が身に起これば理解できなくなる。そして真実の究明を、科学ではなく法に頼ろうとする。その法は、ガリレオ裁判でも述べたように、科学を曲げてしまうことがあるのだ。

Sankei Web 2006.9.13
ぜんそく治療で二男死亡、8200万円支払い命令 亀田病院の過失認定
病院側は「二男の死因はぜんそく予防薬の成分である『テオフィリン』の中毒症状による心不全。そもそも、カテーテル挿入時に血管を傷つけてはいない」などと主張していたが、小磯裁判長は「二男に中毒症状はあったが、死因をテオフィリンによる心不全とする具体的な根拠はない」と退けた。

参考資料

JBM / ガリレオ裁判 2 資料


コメント

第13回日本アレルギー学会春季臨床大会
会 期:2001年5月10日(木)、11日(金)、12日(土)
会 場:パシフィコ横浜

http://square.umin.ac.jp/allergy-2001s/

一般演題
O-250 テオフィリン中毒で死亡した1喘息剖検例
井上 明 桝沢政広 金子教宏 本島新司
(亀田総合病院総合内科/呼吸器内科)

250 テオフィリン中毒で死亡した1喘息剖検例

通常とは異なった経過をたどったテオフィリン中毒による喘息症例を呈示する。
症例 17歳男性。2歳発症のアトピー型喘息。2000年に入ってから不安定になり発作にて何回か入院を繰り返していたが、2000/12/28に退院。2001/1/1早朝嘔 気にて来院。血清テオフィリン濃度が103μg/mlあったため活性炭を内服させるとともに、活性炭による血液吸着を行うことにした。腎臓内科の協力にて吸着を開始したが 、途中で活性炭カラム内が2回凝血したので通常の血液透析をの準備を行っているうちに痙攣が発症した。経鼻的に気管内挿管し呼吸器を装着したが、この時点から採血直後に凝 血する現象が始まり、次いで著明な肉眼的血尿とともに採血部位からの持続出血が始まった。この時点でAPTT 73.2秒と延長、FDP 39.6 μg/mlと上昇が認められたが血小板数は35万/μlあった。その後貧血が進行、大量の輸血を行うも死亡した。剖検では後腹膜腔への出血と肺鬱血が目立つ所見であり大血 管内の血栓は存在しなかった。2000/12/28の血液中のテオフィリンは検出限界以下であった。臨床的にはDICが急激に誘発され肺鬱血が生じたとの解釈は可能である が、その誘因として低酸素血症、活性炭カラムの可能性も考えられた。血栓形成傾向を示す先天性疾患は否定的であった。このような例は稀であると思われるので報告した。

投稿 いのげ | 2006/09/16 17:24:10

いのげ先生

情報を有り難うございます。

亀田総合病院は、ここまで真摯に取り組み、医学の限界を示し、教訓を与えてくれました。

———-

この判決のニュースを目にするまでは、私が抱く亀田総合病院の印象は、あまりよいものではなかったのですが、ある程度見直すことにしました。

混合診療を導入し、アメリカ型医療産業の勝ち組になろうとしていただけの様にしか思っていませんでした。

投稿 道標主人 | 2006/09/16 22:03:24

わたし個人は亀田総合と何の関係も無いし,まったく離れた地に住むものです.
この事件については亀田総合は間違ってなさそうな気が強くします.
そしてアメリカ型医療産業を目指しているのかもしれませんが,現時点では日本の保険適応(+ベッド代)の範囲内で診療しているのではないかと想像します.ベッド代がなんぼか知りませんが.

投稿 いのげ | 2006/09/17 1:18:04

ところで以下の文献は医療制度論において必読と思われますのでこのブログ左のアフェリエイト欄に追加していただければさいわいです

「改革」のための医療経済学 (単行本)
兪 炳匡 著
メディカ出版 (2006/07) 価格: ¥ 1,995 (税込み)

http://www.amazon.co.jp/00ce39%976900d06e05f08106eS3bv424cn0866-Q6a-pb3S21/dp/48

40417598

第1章は「忙しい読者の為の総括」になってますがその見出しだけ引用

2章のまとめ 比較による医療の相対的な位置付け
1 医療問題の3つの分類
2 国内的にも国際的にも低い日本の医療費(コスト)
3 日本の医療におけるアクセスは決して悪くない
4 日本の医療の質は指標により順位変動が大きい
5 特定の指標がつまみ喰いされる危険性

3章のまとめ 医療経済学に何ができるのか
1 医療経済学の定義
2 医療と経済学の望ましい関係
3 専門大学院に求められる教育

4章のまとめ 医療費高騰の犯人探し
1 疑われた5つの要因はいずれも「小物」-最大の黒幕は医療技術の進歩?
2 高齢化の総医療費上昇への影響はほぼゼロ
3 医療保険制度の功罪
4 所得上昇と医療費の関係ー国内分析によると医療費は必需品
5 医師数増加を問題視する「古くて古い」議論
6 「モグラ叩き」では問題は解決しない
7 長期介護医療費に大きなインパクトを持つ社会的要因はさらに検証が必要
8 小さな政府がもたらす介護問題の悪循環のシナリオの例

5章のまとめ 改革へのロードマップ
1 改革を語る前に明らかにすべき価値基準
2 5つの効率基準とその改善案
3 米国の平均入院日数が短く見えるカラクリ
4 効率の良い予防医療がコストを高騰させる理由
5 整備すべき制度改革のインフラ(社会基盤)
6 改革案のまとめ

投稿 いのげ | 2006/09/17 1:21:14

いのげ先生
重ねてご教示有り難うございます。

> この事件については亀田総合は間違ってなさそうな気が強くします.
私もそのように思います。

要らぬことを申しまして、申し訳ありません。アフィリエイトにも加えさせて頂きました。

投稿 道標主人 | 2006/09/17 2:28:33

御高配ありがとうございました

投稿 いのげ | 2006/09/17 5:22:42

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