転送妊婦死産流産報道事件 9 / 義務を忘れた医師たち資料
Posted by guideboard on 2007/09/15/Sat
Sankei WEB 2007.8.31 論説 主張 ( 社説 )
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070831/shc070831001.htm
【主張】妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち
次々と病院から受け入れを断られ、たらい回しにされた奈良県の妊娠中の女性が、救急車の中で死産した。奈良県では昨年8月にも、分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦が、19カ所の病院に転院を断られ、死亡している。悲劇が再び起きたことに死亡した妊婦の夫は「この1年間、何も改善されていない。妻の死は何だったのか」と怒りをあらわにする。その通りである。「教訓が生かされてない」と批判されても仕方がない。
女性はようやく見つかった10カ所目の大阪府高槻市の病院に向かう途中、救急車内で破水し、その直後に救急車が軽ワゴン車と衝突した。
事故後、消防隊員が連絡すると、病院側は「処置は難しい。緊急手術も入っている」と断った。その後、大阪府内の2病院にも断られ、困った消防隊員が再び要請すると、高槻市内の病院は受け入れをOKした。結局、病院にたどり着いたのは、119番から3時間もたっていた。
奈良県では危険な状態にあるお産の周産期医療の搬送は、健康状態を把握しているその妊婦のかかりつけ病院が県内の2病院に連絡し、それぞれが受け入れ先を探す。この仕組みだと、比較的受け入れ先が見つかりやすい。
しかし、死産した女性はかかりつけの医者がいなかった。このため、一般の搬送の手順で消防隊が受け入れ先を探した。これが時間のかかった理由のひとつだという。
奈良県の幹部は「かかりつけ医のいない妊婦の搬送は想定外だった。すぐに対策をとりたい」と話すが、トラブルや事故は予期せぬ中で発生するのが常である。早急に抜本的対策をとる必要があろう。
周産期医療を扱う病院は、全国的に減少している。産婦人科医は内科医などに比べ拘束時間が長く、訴訟も多いからだ。
妊婦のたらい回しは、奈良県だけに限った問題ではない。厚労省は産科医などの医師不足対策に本腰を入れて取り組むべきである。
それにしても、痛みをこらえる患者をたらい回しにする行為は許されない。理由は「手術中」「ベッドがない」といろいろあるだろうが、患者を救うのが医師や病院の義務である。それを忘れてはならない。
(2007/08/31 05:02)
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紀伊民報 2007.9.6 コラム・社説 水鉄砲
http://www.agara.co.jp/modules/colum/article.php?storyid=131167
9月6日(木) 「『医は仁術』はどこへ」
救急車で運ばれる妊婦の転送先が決まらず、死産した奈良県の事例は、内容が明らかになるにつれて何か背中に冷たいものが走るような気がする。
▽救急搬送という、人の生命にかかわるような事態に、受け入れを断るような病院がいくつもあったということは、常識では考えられないことだ。札幌市でも昨年1年間で、妊婦ら女性5人が救急搬送中に、病院から受け入れを拒否されていたことが分かった(本紙5日付)。この5人は、かかりつけ医がいなかったからだそうだ。
▽たとえかかりつけ医がいなくても、病人を治療するのが医師ではないか。日本の医道は、病院の建物が立派になり医師の人数が増えただけで、算術(もうけることを考える)は発達しても、仁術(じんじゅつ=損得を度外視し、奉仕的に治療する)は発達していないとみた。
▽死産問題に関して、舛添厚生労働相は「奈良県では昨年にも同様の事故があったのに検証もしておらず、これでは救える命も救えない」と厳しく指摘している。「救える命も救えない」という指摘は奈良県にとって、ある意味では屈辱的だ。奈良県は厳しい宿題を与えられたのである。
▽和歌山県でも、お産のできる病院は減っている。そうした現状を踏まえ、医療関係者や地域の首長は、この出来事を「他山の石」として受け止め、いろいろな場合を想定して、具体的な対策を考えておいてもらいたい。(香)
(’07/09/06)
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紀伊民報 2007.9.11 コラム・社説 水鉄砲
http://www.agara.co.jp/modules/colum/article.php?storyid=131423
9月11日(火) 「産科医の過重労働」
奈良県で妊婦の転送先が決まらず死産した問題を、先日小欄が取り上げたことで、医療関係者などから抗議のメールが数通、届いた。
▽38歳の東京都の男性からは、産科医の過重労働や奈良県の医療行政の怠慢を、小欄が見過ごしているという指摘である。状況はこうだと、毎日新聞に掲載された中村秀明記者の記事「医師は疲れ果てている」を紹介していた。
▽少し長いが要約する。「(救急搬送中の妊婦が死産した)あの夜、奈良県立医大で当直医2人が詰める産科病棟の状況。午後11時、14時間に及ぶ手術が終わり30分後に別の人の緊急帝王切開手術。次に陣痛の急患が入院。このとき救急隊からの電話。お産の診療中で後にしてほしいと当直医は答えた。そのあと緊急入院2人の治療。入院してきた急患の出産に立ち会う。一睡もできず午前8時半に当直を終えた」
▽山形市の男性医師47歳からは「日本の産科医療崩壊は人災です。国会議員がしっかりしなければどうしようもありません。医は仁術かもしれませんが、その崇高(すうこう)な精神は司法界をはじめ、その他の外野がすべて奪い去りました」という意見。産科医が患者を助けられないと、福島県のように不当逮捕か不当起訴される、と訴えている。
▽こういう指摘を受けると、過酷な勤務医の実態と、医療行政の怠慢が「医は仁術」以前の問題として見えてくる。問題の根は深い。(香)
(’07/09/11)
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他社の社説を収載しておく。いずれも医療崩壊の元凶に迫るには、まだまだだ。
YOMIURI ONLINE 2007.8.30
社説・コラム
妊婦たらい回し 一刻も早い産科救急の整備を(8月31日付・読売社説)
産科の緊急医療体制の欠陥がまた、悲劇を招いた。
奈良県の妊娠7か月の女性が大阪府の病院へ運ばれる途中、救急車内で死産した。九つの病院に受け入れを断られ1時間半も搬送先が決まらなかった。
奈良県では昨年8月、公立病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明になった妊婦が19病院に受け入れを拒否され、死亡している。
妊婦のたらい回しは、首都圏をはじめ全国で起きている。今回のような例は氷山の一角ではないか。一刻も早く、妊婦や新生児の緊急搬送システムを構築し、お産の安全を確立することが必要だ。
奈良県の妊婦は未明に出血した。通報を受けた消防は、奈良県立医大病院に受け入れを要請したが、宿直医が診察中などという理由で要請を3回断られた。
しかし、空きベッドはあった。なぜ受け入れられなかったのか。窓口の職員と医師が十分に意思疎通できていたのかどうか。仮に医大病院が無理だったとしても、消防と協力して、別の受け入れ先を探すことができたのではないか。
やっと40キロ離れた大阪府高槻市の病院を見つけたものの、搬送中の救急車が事故に遭い、到着は通報から3時間後になった。もっと早く搬送できていれば、胎児は助かったかもしれない。
奈良県や大阪府は、空きベッドの有無や医師が対応可能かどうかをパソコンで確認する産科病院の相互支援ネットワークを、それぞれ設けている。
だが、ネットワークは、病院間での搬送が前提になっていて、医師が病状を確認していないと、搬送のシステムが動き出さない。今回の妊婦のように、かかりつけの医師がなく、消防から直接要請を受ける場合は想定していなかった。
重篤な患者については、救急車からの要請にも対応できるよう、運用を改善すべきではないか。
奈良県は、リスクの高い妊婦や胎児を専門的に診療する「総合周産期母子医療センター」の設置も遅れている。
厚生労働省は、今年度中に全都道府県が整備するよう求めてきたが、奈良県は医師不足から、山形、佐賀、宮崎の3県とともに来年度以降にずれ込みそうだ。こんな地域格差があってはならない。
産科医不足は深刻だ。2004年までの10年間で7%も減り、1万人余になった。出産を扱う医療機関も05年までの12年間に1200施設が閉鎖された。
厚労省は来年度予算の概算要求に医師不足対策費160億円を盛り込んだが、養成には時間がかかる。当面の対策として、自治体や医療機関が緊密に連携した広域的な救急体制を整備すべきだ。
(2007年8月31日1時32分 読売新聞)
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北海道新聞 2007.9.3 社説
妊婦救急搬送 悲劇を繰り返さぬため(9月3日)
奈良県橿原市の妊婦(38)が救急搬送途中に救急車の中で死産した。十一カ所の病院で「処置中」などとして受け入れてもらえず、最後に大阪の病院に着いたのは119番通報から三時間後だった。
奈良県では一年前、出産途中に意識不明になった女性が十九カ所の病院に転送を断られ、八日後に死亡した。
県は再発防止のために医療体制の拡充を図ってきたが、「たらい回し」の末の悲劇が繰り返されたのは残念だ。
県内には、重症の妊娠中毒症などで危険な状態の妊婦を高度の機能を持つ病院に転送するために、各病院のベッドの空き状況や医師の態勢を確認できる情報検索システムがある。
かかりつけの医師の判断を前提とした病院間の転送の仕組みだ。
橿原市の女性は妊娠六カ月だったが産婦人科にかかっていなかった。
転送システムは今回のような患者は想定しておらず、せっかくの機能を生かせなかった。さまざまな患者に対応できるよう見直しが必要だろう。
救急隊と各病院、さらには病院内の医師と窓口職員との意思疎通が十分でなかったこともうかがえる。
最初に連絡を受けた県立医大病院ではベッドが空いており、当直医は断ったつもりはないと説明している。
県立医大病院には受け入れを三回も要請していたのに、救急隊に対応したのは窓口職員だけだ。的確な情報が医師に伝わらなかったのではないか。
厚生労働省は危険度の高い患者を受け入れる「総合周産期母子医療センター」の設置を都道府県に求めている。
奈良県では設備が十分に整っていないため、まだ設置されていない。センターがあれば、事態が少しは変わっていたかもしれない。
産科医は全国一万人余、道内四百人ほどで、過去八年間で全国で6%、道内では10%も減っている。勤務が不規則できつく、医療ミスがあれば訴訟を起こされやすいことが背景にある。
医師不足による救急患者のたらい回しは全国どこでも起こり得る問題だ。
北海道は広く、地方では病院と病院の距離が離れている。受け入れ拒否がないよう、しっかり対応してほしい。
道は、総合周産期母子医療センターとして札幌と釧路の各一病院を指定している。ほかに、函館、旭川、北見、帯広の四カ所の病院が事実上、センター機能を果たしている。
同時に、同一医療圏の中で産科医を一カ所に集めて複数体制で効率運用する集約化を図ってきた。
ただ、産婦人科医療の充実を図るには医師の増員が不可欠だ。
診療報酬の見直しを含む勤務医の待遇改善や大学医学部の定員増、医療訴訟への対応と課題は山積している。
これらを着実に解決していかなければ患者の不安は解消されない。