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転送妊婦死産流産報道事件 7 資料

Posted by guideboard on 2007/09/14/Fri

» 転送妊婦死産流産報道事件 7

YOMIURI ONLINE 関西発 2007.9.8

夜間急患分散へ補助金…県調査委、初会合

奈良知事が検討方針

奈良県橿原市の妊婦(38)が相次いで病院から受け入れを断られ、死産した問題を受け、再発防止策などを検討する県の調査委員会の初会合が7日、県庁で開かれた。委員の医師らからは、入院を必要としない救急患者も拠点病院に集中している実態などが指摘され、終了後に記者会見した荒井正吾知事は、夜間の救急患者の診察を民間の診療所でさらに受け入れてもらうよう、補助金などで促す考えを示した。委員会は11月中に報告書をまとめる。

県内では昨夏、転院拒否で妊婦が死亡したが、検証する委員会は設置されず、批判が集まった。今回の委員会では、昨夏のケースの検証も含めて、救急搬送システムの見直しなどに取り組む。

この日は、県や大阪府、和歌山県の医療、消防関係者、オブザーバーの厚生労働省職員ら27人が出席。委員からは「救急隊と病院職員との意思疎通ができなかった」といった意見が出た。>

(2007年9月8日 読売新聞)

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YOMIURI ONLINE 関西発 2007.9.7

妊婦搬送 医療体制の課題

医大生県外に7割流出 病院到着時間年々長く

奈良県橿原市の妊婦(38)が相次いで病院から受け入れを断られ、搬送先の大阪府高槻市で死産した問題は、奈良県内の産科医療体制の不備を改めて浮き彫りにした。県と大阪府などは県境を越えて病院を探索する広域連携システムを5日から前倒しで運用。7日には検討委員会を開き、原因究明と再発防止策の検証に乗り出す。医師不足など県内の医療体制の課題を探った。

(田村勇雄、阿式智子)

医師給与も低水準

県内の医療体制について、舛添厚労相は「全国平均よりも、いろんな意味で問題がある」と厳しく指摘した。産科医不足は、深刻な問題となっている。

県内では2005年度以降、5病院が産科を休診し、現在29機関で分娩(ぶんべん)に対応。産科医の数は現在72人で、昨年より3人減少した。人口10万人当たりでは、04年調査で0・3人。近畿2府4県では滋賀県と並び最下位だ。

県立医大(橿原市)の卒業生のうち、県内に残る医師は3割台で低迷。研修先の病院を自由に選ぶことができる「新医師臨床研修制度」が04年度に導入されて以降、卒業生のほぼ7割が研修先に県外の病院を選ぶようになった。

研修制度が導入されるまでは、6割が県内に残っていたが、同医大は「もともと学生の7割ほどが大阪など県外出身。新制度が導入されて、出身の府県に帰るケースが増えた」という。

さらに公立病院に勤務する医師の年収を比較すると、05年度の総務省の調べで、県は約1287万円(平均年齢40歳)。全国トップの沖縄県(同43歳)に比べて約600万円低い。医大病院の関係者は「他県に比べて給与水準が低いとなれば、医師も集めにくい」と漏らす。

県医務課によると、高度の治療が必要なハイリスクな妊婦を県外に搬送した割合は06年に25・3%。4人に1人の割合で県外の病院に治療を頼ってきた計算だ。

救急搬送時間も年々長くなっている。消防署の出動から患者収容まで1998年以降、平均7分以内で収まっているのに対し、患者収容から病院到着までの時間は98年は平均19・5分だったが、05年は平均25・6分かかった。

総務省消防庁によると、出動から病院収容までの平均時間は05年は32・6分で全国平均(31・1分)よりも1・5分も遅く、全国で下から8番目。西日本ではワースト1位だった。

県内には受け入れ先の病院を探す仕組みとして「県広域災害・救急医療情報システム」と、かかりつけ医からの照会に応じる「県周産期医療情報ネットワーク」がある。しかし、かかりつけ医のいない今回のケースでは同ネットワークを使えなかった。

女性を搬送した中和広域消防組合は、今回の問題が起きるまで、このネットワークがあることさえ知らなかったという。中西恒夫・橿原消防署長は「消防からアクセスできていれば、大阪まで行かなくても済んだかもしれない」と悔やむ。そして「結局、子どもが亡くなり患者が一番辛い思いをすることになる。県民のため、県全体が一つのネットワークになることができれば」と話している。

広域連携システム…知事「病院探し短縮」と歓迎

荒井知事は6日の定例記者会見で、県と大阪府、徳島県の1府2県で先行して5日から運用が始まった広域連携システムについて、「県外で受け入れ先の病院を探す時間が短縮される」と歓迎した。

同システムは、橿原市の妊婦(38)が相次いで病院の受け入れを拒まれ、死産した問題に絡み、当初の10月開始予定を前倒して運用を始めた。かかりつけ医からの搬送依頼に応じて、県外の病院との交渉窓口になる拠点病院が同システムを活用する仕組み。

ただ、今回問題となった、かかりつけ医のいない妊婦の場合は「まだ対応できていない。今後の検討課題だ」とした。

また、昨夏にも転院拒否で妊婦が死亡したケースがあったが、設置を約束していた緊急搬送システムの検証委員会をこれまで設けていなかったことについて、「県の責任だ。私は5月に就任したが、引き継ぎはなかった」と職員とのコミュニケーション不足を露呈した。

県立医大(同市)の学生のうち約7割が卒業後に県外へ流出する状況について、「卒業後、一定期間は県内で働いてもらう奨学金制度という方法もある、と舛添さんから助言いただいた。検討したい」と述べた。

県内の公立病院の勤務医の年収が、全国平均に比べて低い点について、「拘束時間が長い勤務医の手当や給与を上げるなどして、改善できるのではないか」とした。

(2007年9月7日 読売新聞)

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YOMIURI ONLINE 関西発 2007.9.5

近畿など9府県、妊産婦広域救急を前倒し今日から

近畿地方と徳島、福井、三重の9府県が5日から、府県境を越えて非常時の妊産婦を受け入れる広域救急搬送システムの運用をスタートさせる。10月開始の予定だったが、先月下旬、奈良県橿原市の妊婦が相次いで病院に受け入れを断られて死産した問題を受け、住民の不安が高まっていることから、当初予定より約1か月早めた。

大阪府の太田房江知事が4日の定例会見で明らかにした。

同府によると、各府県に少なくとも1か所ずつ、救急隊などからの連絡窓口となる拠点病院を設定。緊急手術が必要などの妊産婦について、拠点病院がまず地元の府県内で受け入れ先を探し、見つからない場合、他府県の拠点病院に依頼する。拠点病院の医師同士が直接連絡を取り合うことで、妊産婦の正確な容体を把握できるなどのメリットがあるという。

大阪府では、すでに単独で拠点病院による受け入れ先検索システムを採用しているが、奈良県などでは妊産婦にかかりつけの病院がない場合、救急隊が独自に各地の病院に連絡して空きベッドを探すなどしなければならず、搬送に時間がかかるケースがあった。

新生児集中治療室が最も少ない徳島県では6床しかないが、9府県では計475床あるため、機動的な運用が可能となり、遠距離の場合はヘリコプターでの搬送も行うという。

昨年8月、奈良県大淀町立大淀病院で出産時に意識不明となった妊婦が計19病院に転院の受け入れを拒否されて死亡した問題を受け、今年3月、9府県が「近畿ブロック周産期医療広域連携検討会」を発足させ、協議を重ねていた。拠点病院間の連絡事項や方法など運用の詳細については順次、整備していく。

太田知事は「拠点病院に一元化することで効率よく受け入れ先を見つけられる。悲劇が二度と起こらないようシステムを速やかに稼働させたい」としている。

(2007年9月5日 読売新聞)

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YOMIURI ONLINE 2007.9.4

産科の体制整備、奈良県に要請…舛添厚労相

救急搬送された奈良県橿原市の妊娠中の女性が、9病院で受け入れを断られた後、死産した問題で、舛添厚生労働相は3日、荒井正吾・同県知事と面会した。

舛添厚労相は、同県の産科の受け入れ体制整備と検証作業について、早急に対策をとるよう求めるとともに、国として支援策の拡充を約束した。その上で、厚生労働行政全般について、全国の知事と定期的に協議する場を持つ意向を示した。

面会後、舛添厚労相は「今回のことをきっかけに、現場と首長、厚労省の連携がとれていないと感じた。定期的な協議が必要だ」と述べ、今後、全国知事会に提案する考えを表明した。

奈良県の問題については、同県が今月、発足させる検証委員会に厚労省から担当者2人をオブザーバーとして派遣することを約束した。

県は、昨夏、妊婦が19病院に受け入れを拒否されて亡くなった問題が発覚した後、検討委員会を設置し、緊急搬送システムの問題点を検証するとしていた。しかし、これまで同委員会を設置しておらず、荒井知事が、この日、舛添厚労相に説明した。

これに対し、舛添厚労相は、早急に対策をとるように求めたうえで、「あぜんとした。あれだけの事故がありながら、本当に問題だ」と話した。

(2007年9月4日 読売新聞)

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asahi.com 2007.9.1

県の対応お粗末 医師不足解消策次々破綻 奈良死産問題

2007年09月01日

救急搬送された奈良県橿原市の妊婦(38)が医療機関に相次いで受け入れを拒まれ、死産した問題で、受け入れ拒否の背景にあるとされる慢性的な医師不足を解消するため、同県などが取り組んできた医師や看護師の確保策が次々と頓挫していることがわかった。産科医らが求めていた救急搬送態勢の整備計画なども事実上、放置されており、産科医療をめぐる行政の対応の遅れが目立っている。

県が産科や小児科、へき地の医師不足に対応して今年度から始めた「ドクターバンク制度」。出産などで退職した医師を掘り起こして登録し、医師が足りない病院に紹介する仕組みだ。だが、受け付け開始から5カ月たった今も登録者はゼロ。計19病院に受け入れを断られて昨年8月に死亡した妊婦が最初に診察を受けた町立大淀病院など、県内の公的病院から計9人の求人が寄せられているのに、まったく紹介できていない。

県はこれまで、県医師会にチラシを配るなどして協力を要請してきた。ただ、医師会から提供されている退職者を含む2千人分の会員名簿については、医師会側が「使ってもらっても構わない」としているのに、一度も利用していない。県内の女性医師(39)は「医師を登録して派遣する民間企業は多い。県のバンクを選ぶ具体的なメリットが伝わってこない」と疑問視する。

看護師や助産師の確保も難航している。県立医大病院は今年度、例年80人程度の新規採用を200人に増やした。来年5月に周産期医療の中核施設「総合周産期母子医療センター」を開設するため、専属の看護師ら50人が必要になったのが主な理由。年齢制限を35歳未満から50歳未満に引き上げ、試験科目も減らす独自の工夫を凝らした。

ところが、願書を提出したのは半分超の106人。福岡、香川両県でも説明会を開いたが、四国・九州からの応募者は1人だけだった。「実際には80人確保できるかどうか」と、人事担当者は嘆く。

柿本善也・前知事は昨年11月の記者会見で、昨夏の妊婦死亡を受けて、「庁内で検討会議を設けて検証する」と約束したが、会議はこれまで一度も開かれていなかった。その後、近畿圏での広域連携を強化するための会議が設けられたため、県単独での議論は置き去りにされたという。

一方、県内の産科医らでつくる「周産期医療対策ワーキンググループ」は昨年3月、県に提言書を渡した。妊婦の症状に合わせて救急搬送するため、県内の各病院を1〜3次指定に振り分けるなど、今年度中に周産期医療についての具体的な整備計画を策定するよう求めていた。

だが、県は整備計画について検討すらしていない。県幹部は「県立病院の建て替え問題などを抱え、状況が不確定だったため」と説明している。

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YOMIURI ONLINE 2007.8.30

受け入れ拒否 死産

1年前には妊婦死亡

奈良県内から救急搬送された妊婦が29日、同県や大阪府などの計9病院で受け入れを断られ、救急車内で死産した。

同県では昨年も、公立病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦が、同府内などの19病院に受け入れを断られた末、搬送先の病院で8日後に死亡。これを教訓に、県などが妊産婦の救急搬送システムの改善を急いでいるところだった。産科医の不足、それに伴う病院の産科撤退は全国で深刻化しており、命の誕生を担う産科医療が危機に直面している。(大阪社会部 細野直人、茨木崇志、医療情報部 館林牧子)

妊婦搬送の経過

午前
2時44分 奈良県橿原市内のスーパーで女性が体調を崩し、知人が119番通報
2時52分 中和広域消防組合の救急車が到着
2時55分 奈良県立医大産婦人科に受け入れ要請。「手術中」のため搬送できず

3時ごろ〜4時すぎ 大阪府内の5病院に要請したが、「処置中」などとの返答。その後、県立医大産婦人科・救命センター、同府内の3病院に要請したが、「2次輪番へ行ってください」などと断られる。この間、女性はスーパー駐車場に止めた救急車内で待機

4時19分 同府高槻市内の病院が受け入れ許可。救急車出発
5時5分 女性が救急車内で死産
5時9分 高槻市内で救急車が交通事故
5時15分 高槻市消防本部が同市内の病院に電話するが、「受け入れ困難」と回答。他の2病院も断る
5時30分 高槻市内の病院に再度要請し、受け入れ許可
5時46分 病院に到着

周産期センター6県で未整備

厚生労働省は1996年度から、「総合周産期母子医療センター」を全都道府県に最低1か所整備する計画を進めてきた。今年度までに全都道府県で整備を完了するのが目標だったが、奈良県を含む6県では、現時点で未整備のまま。このうち、岐阜、鹿児島は今年度中に整備される予定だが、奈良、山形、佐賀、宮崎は、来年度以降にずれ込む見込み。病床確保や人員配置が追いつかないのが原因と見られる。

今回の事態を受け、厚労省は、センターの整備を急ぐとともに、整備までの期間も十分な対応ができる体制をとるよう、奈良県はじめ関係各県に求めた。

救急搬送の改善進まず

午前2時55分、奈良県橿原市の県立医大病院で、当直の職員が電話を取った。中和広域消防組合通信指令課から、産婦人科への患者受け入れ要請だった。当直の医師は2人で、ベッドは2床空いていた。

職員は医師に連絡したが、この1分前に別の妊婦が搬送されていた。医師は「お産の診察中。後にしてほしい」と話し、職員は「患者が入った」と消防に伝えた。もう1人の医師は、帝王切開した入院患者につきっきりだった。

午前4時過ぎの2回目の要請にもこたえられず、3回目は同病院の救命センターに要請があったが、「患者の状態を聞く限り、治療対象ではないのでほかをあたって」と断ったという。

奈良県には、リスクの高い妊婦を受け入れる総合周産期母子医療センターがないうえ、昨年以降、医師不足で産科を閉鎖する病院も相次ぎ、患者が県立医大などの基幹病院に集中。昨年8月に同県大淀町立大淀病院から搬送された妊婦が死亡した問題でも、県立医大病院は「満床」を理由に受け入れを断っている。

29日に記者会見した県は「対応はやむを得なかった。県全体でカバーする取り組みが必要」と説明した。

県内の他の産科救急の病院も受け入れ不可能だったため、消防は大阪市消防局などに電話で照会をかけながら病院を探した。同市内などの7病院と府立母子保健総合医療センター(和泉市)に電話を入れたが、通報から1時間半後に受け入れ先が見つかるまで断られ続けた。

その理由の多くは「処置中」だった。大阪市西淀川区の病院は「未明に4人の分娩があり、1人が帝王切開。さらに2人が待機中の状態で、当直医1人に加え、もう1人の医師を呼び出すなど手いっぱいだった」と話す。府内も公立病院の産婦人科休診などが相次ぎ、分娩可能な施設は200程度に過ぎない。

同医療センターの場合、受け入れ可能な体制はあった。センターは切迫早産や前置胎盤などハイリスク患者に対応するための施設で、軽症患者は原則、対象外だが、これまでも症状によっては受け入れてきた。センターによると、「患者を搬送できるか」という消防からの電話に応対したオペレーターが「紹介型病院で一般救急は受け付けていない」と答えた上で、医師に電話をつなぐかどうかを尋ねたところ、消防側は搬送をあきらめた、という。センターの末原則幸産科部長は「出血があり死産の可能性があると聞けば、受け入れることはできた。病院からの転送依頼なら、すぐにドクターと連絡を取るようにしているが」と悔やむ。

センターに対するハイリスク患者の転院依頼は年間約400件あるが、ベッド数不足などで、受け入れ可能なのは3割程度。末原部長は「救急患者を無条件に受け入れることはできない。市民病院など地域の救急病院の体制を強化する必要がある」と話す。

総合周産期母子医療センター
危険な状態にある妊婦や胎児の処置にも対応できる高度な機能を持った拠点医療施設。国の指針で、都道府県の人口が100万人以上の場合、「新生児集中治療管理室」が9床以上など、設備の基準が定められている。

産科医、施設全国で減少 30病院で断られた例も

妊婦が“たらい回し”にされるのは、関西地方だけの問題ではない。国立成育医療センター(東京都世田谷区)の久保隆彦・産科医長は「首都圏でも妊婦の受け入れは難しくなっており、たとえば、神奈川県から千葉県や静岡県などへ搬送されるのは日常茶飯事。9病院から断られたと聞いても、特に驚かない」と話す。久保医長によると、神奈川県で今年、妊娠中期に破水した妊婦が約30病院に受け入れを断られた例もあったという。

こうした事態の背景に、産科医の不足と、お産を扱う医療機関の減少がある。

全国の産婦人科医は、2004年に1万594人と、10年間で7%減少。日本産科婦人科学会によると、出産を扱う医療機関は1993年に4286施設あったが、2005年に3056施設に激減した。

都市部では、地域の中核病院や診療所の産科が閉じ、大病院にお産が集中。産科のベッドはいつも満床で、緊急に対処が必要な妊産婦の診療要請があっても、受け入れる余裕がない状態が慢性化している。

全国の総合周産期母子医療センターへの調査では、母体の救急搬送を受け入れた率は、2005年に全国平均で67%だったが、東京と大阪の都市部では44%と極端に低かった。調査した全国周産期医療連絡協議会は「救急搬送体制は都道府県単位だが、現実には県境をまたいだ搬送が日常的になっており、それを円滑に実施するシステムが必要」と指摘する。

地方では産科医不足は一層深刻で、産科医がいない空白地帯もある。北海道根室市では昨年9月から常勤の産科医が不在で、妊婦は緊急時や出産の際は約120キロ離れた釧路市の病院に行く。道内の3大学が協力、地域の中核病院に医師を派遣し、100キロ圏内に出産できる施設を確保できるよう努めてきたが、医師不足から難しくなったという。

北海道大産婦人科の水上尚典教授は「産婦人科医は拘束時間が長いうえ、出産にまつわる訴訟が多いのでなり手が減っている。報酬面の改善も含め抜本的な対策が必要だ」と訴える。

一刻も早く抜本対策を

「このままではまた同じことが起こってしまう」。昨年8月、奈良県の妊婦が“たらい回し”にされた問題を取材した際、ある産科医はそうつぶやいた。医師や病床の不足……。行政側は「医師を派遣する大学医局の問題などもあり、簡単には対応できない」というが、一刻も早く抜本的な対策を取らなければ、悲劇は再び繰り返されてしまう。昨年8月からの1年間は何のためにあったのだろうか。(茨木)

(2007年8月30日 読売新聞)

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YOMIURI ONLINE 関西発 2007.8.30

妊婦の悲劇また、救急搬送中に流産

妊婦に対する救急医療体制の不備が再び浮き彫りになった。29日未明、妊娠3か月だった奈良県橿原市の女性(36)を搬送中の救急車が大阪府高槻市内で交通事故を起こし、搬送先の病院で胎児の死亡が確認された問題。同県では昨年8月、出産時に脳内出血となった女性が相次いで転院を拒否され、搬送先の病院で死亡したケースがあり、対策を進めていたところだった。同様の問題が繰り返されたことに、亡くなった女性の夫は「妻の死が生かされていない」と怒りの声を上げた。

「妻の死生かされず」 昨夏の転院拒否 怒りの遺族

「実香の死が生かされていない」——。昨年8月の転院拒否のケースで、妻の実香さん(当時32歳)を亡くした高崎晋輔さん(25)(奈良県三郷町)は今回のニュースを聞き、憤った。「奈良県内で収容できていたらこんなことにはならなかった。行政が真剣に対策を進めてこなかった結果、同じ原因で事故を招いた。この1年間、何をしていたのかと怒りが収まらない」と語気を強めた。

奈良県は、妊娠中から出産後までの緊急事態に備えた産科・小児科の総合的な医療設備を備えた「総合周産期母子医療センター」の未整備県の一つ。県は県立医大病院(橿原市)に新生児集中治療室などを増床して、08年5月に同病院内に同センターを開設する予定にしている。また、県の産婦人科医療部会は、県立医大病院など県内4病院を重篤な妊婦の治療に対応できる「連携強化病院」に指定し、治療の難易度に合わせてエリア内で病院、診療所などを転院、搬送するシステムづくりを検討している。

今回、県の中心的な病院であるその県立医大病院でも、受け入れがスムーズに進まなかったことになる。

県医務課職員は「昨年夏の妊婦転院問題を受け、二度とこのようなことが起きないように努めてきたが体制を整備している途中でこういうことになるなんて……」と悔しさをにじませた。

一方、大阪府精神保健疾病対策課によると、府内には新生児集中治療室などを備えた43の医療機関をネットワークで結ぶ「産婦人科診療相互援助システム(OGCS)」がある。しかし、病院から病院に搬送する2次救急でのみ運用されており、今回のような消防本部が独自に受け入れ先を探す1次救急の場合は利用されない。高崎さんのケースを受け、近畿各府県が持つ周産期医療ネットワークの情報共有については、近畿ブロック知事会議でも課題となり、ネットの相互接続などに向け、検討が進められている、という。

大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長は「本来、地域の病院が引き受けなければいけないが、産科医やベッドの不足で受け入れられないケースは多い。昨年8月の搬送問題を重く受け止め、行政や医師会に人的な補充やベッドの増床などを働きかけているが、すぐには改善できない。このままでは、また同じことが繰り返されてしまう」と話した。

今回、女性を受け入れられなかった病院の一つである大阪府寝屋川市内の藤本病院には、午前3〜4時ごろ、救急隊から「出血しており、診てほしい」と要請があったが、その当時、別の妊婦が分娩(ぶんべん)室に入って1人しかいない当直の産婦人科医が処置していた。加藤茂事務長は「受け入れたのに診られない、というのでは大変なことになるので、看護師が状況を説明し、ほかを探してもらえるよう話した」と述べた。大阪市西淀川区の千船病院にも午前3〜4時の間に受け入れ要請があった。当時妊婦4人の分娩などが重なっており、受け入れを断った。事務担当者は「当直医ら2人がいたが、対応は困難だった。医師不足を解消するしか、こうした事態を避ける方法はないと思う」と話した。

(2007年8月29日 読売新聞)

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YOMIURI ONLINE 関西発 2007.8.30

「受け入れ先」奈良県が検証

システム更新 病院まかせ

奈良県橿原市の妊婦の女性(38)を搬送していた中和広域消防組合の救急車が、相次いで搬送を拒否され、大阪府高槻市内の病院に向かう途中に事故にあった問題で、県は各消防本部が妊婦の搬送先を探索する「県広域災害・救急医療情報システム」で更新は病院任せで、システムで受け入れ可能な病院が県立医大だけだったことに「実際にほかの病院が受け入れることができなかったのか、検証する」とした。

「積極的に指導したい」

県によると、このシステムは病院側に朝、夕の2度の更新を義務づけているが、それ以外は、病院任せになっているという。県は「これからは積極的に更新してもらうように指導したい」としている。

また、このシステムとは別に、周産期を迎えた妊婦のみを対象にした「県周産期医療ネットワーク」がある。

同ネットワークでは、診療所や病院などの医師らが、妊婦に対してより高度な治療が必要とわかると、県立医大病院(橿原市)や県立奈良病院(奈良市)へ連絡。両病院で受け入れが無理な場合は、医師が計五つの病院の中で他の転院可能な病院を探す仕組み。

県によると、このネットワークを使用した方が、医師が各病院に病床の状況などを問い合わせるため、受け入れ先を確保できる可能性が高いという。しかし今回のケースでは、妊婦にかかりつけの医師がおらず、当初、119番による救急搬送による対応だったため、ネットワークが活用されることはなかったという。

(2007年8月30日 読売新聞)

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