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2007.3.13 第 36 回常任理事会
ここでの発言者は以下の通り
唐澤会長、岩砂副会長、宝住副会長、内田常任理事、羽生田常任理事、中川常任理事、石井常任理事、今村 ( 聡 ) 常任理事、木下常任理事
———- 以下引用 ———-
日医雑誌 第 136 巻・第 6 号 / 平成 19 ( 2007 ) 年 9 月
P.1161-
第 36 回常任理事会
平成 19 年 3 月 13 日
午後 2:00 〜 4:30
P. 1162 – 1164
2.平成18年度地域医療対策委員会中間答申の件
内田
地域医療対策委員会は,会長諮問「地域医療提供体制の今後と医師会の役割」を受けまして,とりわけ喫緊の問題である医師確保の問題について1年間での検討をお願いしましたところ,このたび中間報告書「医師確保に関する喫緊の対応」を取りまとめ, 3月8日に久野委員長から唐澤会長に提出されました.
報告書は,はじめに,第I章医師需給問題のこれまで,第II章日本医師会の対応,第III章委員会の提言,おわりに,という構成になっています.
委員会の提言として,ア)研修医の地域偏在,イ)各大学の地域定着の推進,ウ)ドクターバンクの効果的な運営,エ)診療科の偏在対策,オ)病院のオープン化対策,カ)地域住民・患者との相互理解,キ)医師不足地域対策,を挙げておりますが,今回の目玉は,キ)医師不足地域対策で, 「新医師臨床研修制度の研修修了後の一定期間内に, へき地や医師不足地域での勤務の義務化を考慮する」ということです.医師不足地域というのは,病院医師が不足しているところも含めますが,その義務化を検討していただきたいということです.
これについては,明日の記者会見で,医師会の当面する医師不足・偏在に対する対策として話したいと思っています.以上です.
唐澤
この件についてご質問やご意見はありますか.
内田
ちなみに,この義務化については,委員の先生方全員が賛成でした.
中川
義務化のイメージは,具体的にはどんな感じですか.
内田
具体的なものは何も出ていませんが,地域医療協議会のなかで検討していただくということです.ですから,これを実現するためには臨床研修が終わったあとのいわゆる後期研修に関して地域枠を設定するしかないわけです.地域医療協議会のなかで検討いただくことになっています.
羽生田
へき地へ行くのを点数化すべきだという意見もありまして,いわゆる総合診療的なことにこういったものを義務付けるというか,点数化して強化すべきだという話はあります.
内田
そういうへき地勤務,地方勤務に対するインセンティブを何かつける必要があるのではないかという議論は昔からあります.おそらく,今後,学術推進会議や生涯教育推進委員会の,カリキュラム,プログラムをつくるなかでの検討事項になってくるかと思います.
岩砂
私はかねがね思っていますが,国立大学を卒業されるまでに税金が約1億円かかると言われていますね.だから,それだけ国民に対してどこかで奉仕するべきだと思います.
例を挙げますと,その方は国民に対する義務が10点あって,過疎地に行くと何点もらえるということで,国に対する奉仕というかお返しをするという気持ちが大事だと思います.ぜひそのような考えをちょっと頭のなかに入れておいていただきたいと思います.
唐澤
もっともなお話ですね.
石井
義務化という強い言葉がもし出るとすれば,では,「へき地とはどこなのだ」という定義を伴わない義務化は,居住や職業選択の制限になってしまうのではないかと思います.へき地とは何ぞやというコンセンサスは得られているのでしょうか.
宝住
これは,臨床研修が終わったばかりの未熟な人に義務付けることは,へき地の軽視だと思います.私は自治体病院などの大きな病院からある程度経験を積んだ人に一定期間ローテーションで行ってもらうことがいいと思います.
内田
その話は出ています.ですから,この答申では一定期間内にということと,もう1点はバックアップ体制をしっかりすることが出ています.
へき地の定義については,厚労省が従来言っている定義に乗っかっています.
唐澤
これは中間答申ですので,そういう課題があれば,また委員会に検討をお願いすることができますので,出してください.
宝住
もう1つ申し上げたいことは,へき地だけでなく,刑務所の医師など,医師があまり行きたがらないところについても同時に考えたほうがいいと思います.
今村(聡)
私は副担当としてこの委員会に何度か出席しましたが,へき地だけにこだわっていなかったと思います.つまり医師が不足している地域ということで書かれているので,へき地に特化した議論にはなっていないと思います.
内田
病院も含めるという話でした.
木下
義務化というと,確か前も,一部の地域の先生が地域における規制も含めた義務化につながることまで考えておられたわけです.しかし,そういうことは一切関係なくて,新医師臨床研修制度によって,とにかくみんな自由に自分の研修したいところに行きなさいと,彼らの意思に任せた結果,医師のシフトが起こってしまったとすると,そこまで自由にさせたのであれば,研修修了後少なくとも5年ぐらいは地元の県に帰る制度にしても問題がないはずです.その発想がまずいのであれば,研修のレベルはどこも同じだということでオープンにしたわけですから,理論的には東京近辺や大阪近辺だけでなく,地域に戻って研修させてもいいわけです.しかも,たとえば4-5年やったら,あとは自由でいいとということにすれば,ある一定人数は確保されると思います.そういうことまで考えない限りは,このままどんどん都会へ移ってしまったらきわめて深刻な事態になると思います.それは義務化とはいえません.
もう1つは,県が地元の大学に対してある程度お金を出すので,学生たちに残るようにとか,いろいろなアイディアが出てくるだろうと思います.診療科について,厚労省とか国が何科は何人と決めることは問題ですが,各診療斜の代表が出て行って,そしてある診療科には最低何人入りなさいということにしていかなければ,診療科の偏在は解決できないと思うので,それも含めて,最終答申にはぜひ具体的なことを考えていただきたいと思います.よろしくお願いします.
内田
はい.
唐澤
これは委員会で相当議論に議論を重ねて出された中間報告ですので,ただいま議論されたようなことは,この委員会でも出ています.
これはこれで打ち切りまして,次に行きます. 3番.
———-
「医師確保に関する喫緊の対応」
平成18年度
地域医療対策委員会中間報告書
「医師確保に関する喫緊の対応」
平成19年3月
日本医師会地域医療対策委員会
平成19年3月8日
日本医師会長
唐澤祥人殿
地域医療対策委員会
委員長 久野 梧郎
地域医療対策委員会は平成18年8月10日開催の第1回会議におい
て、唐澤祥人会長より「地域医療提供体制の今後と医師会の役割」との諮
問を受けました。本会議ではこの諮問を踏まえて、喫緊の課題である医師
確保の問題について、鋭意検討を重ねてまいりました。
この度、平成18年度地域医療対策委員会中間報告書として「医師確保
に関する喫緊の対応」を取りまとめましたので、ここに提出いたします。
地域医療対策委員会
委員長 久野 梧郎 愛媛県医師会長
副委員長 鈴木 勝彦 静岡県医師会副会長
委員 淺野 定弘 滋賀県医師会長
委員 上原 春男 京都府医師会副会長
委員 薄田 芳丸 新潟県医師会理事
委員 合馬 紘 北九州市小倉医師会長
委員 大久保 幹雄 山梨県医師会長
委員 大山 朝賢 沖縄県医師会常任理事
委員 加藤 紘之 北海道医師会副会長
委員 近藤 太郎 東京都医師会理事
委員 佐々木 美典 山口県医師会常任理事(平成 18 年 12 月9日逝去)
委員 篠崎 英夫 国立保健医療科学院院長
委員 地後井 泰弘 熊本県医師会副会長
委員 長倉 靖彦 神奈川県医師会理事
委員 弘山 直滋 山口県医師会理事
委員 本田 麻由美 読売新聞編集局社会保障部
委員 和田 一穂 青森県医師会常任理事
(委員五十音順)
目 次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第Ⅰ章 医師需給問題のこれまで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1 平成10年までの対策(国を中心に)・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2 平成15年における対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3 平成16年における対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
4 平成17年における対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
5 平成18年における対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第Ⅱ章 日本医師会の対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
1 日本医師会の医師確保対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2 日本医師会の対策への委員会の見解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
第Ⅲ章 委員会の提言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
はじめに
地域医療対策委員会は今年度、平成 18 年度から日本医師会の常設の会内委員会として発足した。本委員会が設置された背景には、少子高齢化を迎えたわが国にとって、地域医療のあり方、とりわけ地域医療連携の重要性がにわかに増してきたことにあると理解している。そして、現在、地域医療提供体制に看過しえない状況が発生している。それは、医師確保の問題である。特定の地域や病院において医師不足が叫ばれ、さらには産科医、小児科医の不足が喫緊の問題となっている。
これらの状況から判断して、唐澤祥人会長よりいただいた諮問「地域医療提供体制の今後と医師会の役割」の答申を委員会として検討する過程において、医師確保の問題については取り分け重要な問題と捉え、平成 18年度中に中間報告書を作成することにした。
かねてより、医師の需給に関する将来見通しでは医師数の過剰を視野に入れ、医学部定員の削減に取り組んできた経緯がある。しかし、少子高齢化社会が進行するなかで、医師数全体というマクロ的な問題とは別に、医師偏在というミクロ的な産科医、小児科医不足が発生し、社会問題化した。さらには、病院における勤務医不足が病院における医療提供と医業経営を厳しいものにしている事実がある。また、郡部、へき地、離島などにおける医師不足もさらに深刻さを増している。国民の権利として「どのような地域でも公平で平等な医療が受けられる」ことを前提とするならば、これらの問題は国の医療体制の根幹を揺るがす問題として、国、地方行政、医療関係者、国民が連携して解決していかなければならない。
本委員会はこの中間報告をまとめるにあたって、国民・患者の利益を最優先とし、国民・患者の視点に立つことを基本とした。そして、特定の診療科、病院、地域における医師不足について、これまでの経緯、現状、原因、国の対応などを踏まえて、医師として、医師会として実行し得る現実的な医師確保対策を検討した。この中間報告書が日本医師会の医師確保対策の施策に貢献し得るものとなれば幸いである。
第Ⅰ章 医師需給問題のこれまで
1.平成10年までの対策(国を中心に)
医師の需給に関しては、これまで厚生労働省(以下「厚労省」と称する)の検討においても昭和 61 年、平成6年、平成 10 年と報告書が提出されているが、その内容はいずれも将来的には医師数が過剰になることを予測するものであった。
医師需給に関するこれまでの経緯
昭和 45 年「最小限必要な医師数を人口 10 万人対 150 人とし、昭和 60 年を目途に充たそうとすれば、当面ここ4~5年のうちに医科大学の入学定員を1,700 人程度増加させ、約 6,000 人に引き上げる必要がある」との見解が明らかにされた。
昭和 48 年「無医大県解消構想」 いわゆる「一県一医科大学」設置を推進
昭和 58 年「人口 10 万人対 150 人」の目標医師数の達成
昭和 61 年「将来の医師需給に関する検討委員会最終意見」において、「当面、昭和 70 年(1995 年)を目途として医師の新規参入を最小限 10%程度削減する必要がある。」との見解が示された。
平成5年 医学部入学定員が 7,725 人となった(昭和 61 年からの削減率 7.7%)。
平成6年 「医師需給の見直し等に関する検討委員会意見」において、「昭和 61 年に佐々木委員会が最終意見で要望し、大学関係者も昭和 62 年に合意した、医学部の入学定員の 10%削減が達成できるよう、公立大学医学部をはじめ大学関係者の最大限の努力を希望する。」との見解が出された。
平成9年 「医療提供体制について、大学医学部の整理・合理化も視野に入れつつ、引き続き、医学部定員の削減に取り組む。」旨が閣議決定された。
平成 10 年医学部入学定員 7,705 人(昭和 61 年からの削減率 7.8%)。
「医師の需給に関する検討会報告書」において「新規参入医師の削減を進めることを提言する。」との見解が示された。
注)厚労省平成 17 年2月 25 日開催第1回「医師の需給に関する検討会」資料より引用
これらの検討会の結論は医師数全体というマクロ的視点から出されているもので、ミクロ的な視点として、医師の偏在問題なども指摘されてはいるものの、具体的なへき地・離島に関する問題や診療科対策への提言が十分であるとは言い難い。
また、平成9年6月3日には「医療提供体制について、大学医学部の整理・合理化も視野に入れつつ、引き続き、医学部定員の削減に取り組む。」との閣議決定がされているとおり、医師の需給問題に関する施策は、全体として医師数が将来過剰になるという予測を基に行われてきた。
あらゆる地域の国民へより公平で、より平等な医療提供を可能にすることを原則とするならば、医師需給の問題はマクロ的視点からのみではなく、へき地における医師確保や診療科毎のバランスの取れた医師の配置などミクロ的な視点も不可欠である。へき地や特定の地域における恒常的な医師不足は勿論、ここ数年、指摘されてきた小児科医、産科医の不足問題はミクロ的な視点からの政策が不十分であった結果といえる。それは医療を取り巻く環境の変化、すなわち人口構造の変化による少子高齢化社会の出現と、それによる疾病構造の変化を十分に理解・把握できていなかった所以である。
2.平成15年における対策
このような状況のなか、へき地の医師確保の困難性、医師の名義貸しなどが社会問題化し、厚労省、文部科学省、総務省の三省合同の横の繋がりとして、国はへき地における医療提供体制の確保を目的に平成 15 年 11 月「地域医療に関する関係省庁連絡会議」を設置した。
3.平成16年における対策
平成 16 年2月 26 日、「へき地を含む地域における医師確保等の推進について」が取りまとめられたことにより、国が医師偏在の解消へ向けて、事実上、本格的に取り組むことになった。その中において「医師の養成・就業の実態、地域や診療科による偏在等を総合的に勘案し、平成 17 年度中を目途に医師の需給見通しの見直しを行う。」として、地域や診療科による偏在を俎上に上げた。
4.平成17年における対策
①平成 17 年2月 25 日
これを受け、将来的には供給医師数が必要医師数を上回るものの、特定の地域、特定の診療科、特定の時間帯における医師の不足感が強いとして、「医師の需給に関する検討会」が設置され、第1回検討会を開催した。
②平成 17 年7月 27 日
「医師の需給に関する検討会」は「医師の需給に関する検討会中間報告書」を取りまとめ、公表するに至った。中間報告では、「医師の偏在による特定の地域と診療科における医師不足は深刻な問題となっており、喫緊に対応すべきである。」としている。その当面の対策として、医師不足地域の医師確保策は、
ⅰ.地方勤務への動機付け
ⅱ.地方勤務への阻害要因の軽減・除去
ⅲ.医学部定員の地域枠の拡大
ⅳ.医師の業務の効率化
などを挙げている。
また、医師が不足している特定診療科の医師確保策は、
ⅰ.診療報酬による誘導
ⅱ.地域の連携・協力体制の構築
ⅲ.医療資源の集約化の推進
などを挙げている。
③平成 17 年8月 11 日
地域医療に関する関係省庁連絡会議は「医師確保総合対策」を打ち出した。これは、将来的には医師過剰になる見通しであるものの、医師の偏在による特定地域や小児科、産科等の診療科における医師不足が、深刻な問題になっているとの現状認識を示したうえで、前述の「医師の需給に関する検討会中間報告書」と「へき地保健医療対策検討会報告書」(平成 17年7月 27 日)の両報告書を踏まえ、緊急策として打ち出し、平成 18 年度予算や国会提出の医療制度改革案に盛り込み、具体化を図るとされた。その対策の概要は「医師確保総合対策の事項一覧」に示すとおりで、医療対策協議会の制度化、集約化・重点化の推進、医学部定員の地域枠の拡大、女性医師バンク(仮称)事業の創設などがその特徴である。
5.平成18年における対策
①平成 18 年7月 28 日
「医師の需給に関する検討会」は平成17年2月に検討を開始して以来、
【医師確保総合対策の事項一覧】
(1)地域の実情に応じた具体的な取組の推進
○医療対策協議会の制度化
(2)医療計画制度の見直しを通じた医療連携体制の構築等
○医療計画による実効性ある地域医療の確保・医療連携体制の構築
○医療資源の集約化・重点化の推進と地域内協力体制の整備
(3)へき地医療や小児救急医療等に対する関係者の責務の明確化と積極
的評価
(4)養成・研修過程における医師確保対策
○医学部定員の地域枠の拡大(地域による奨学金の有効活用)、自治
医大の定員枠の見直し等
(5)へき地医療等に対する支援策の強化
○へき地医療支援機構の診療支援機能の向上(代診医の派遣等)
○都道府県による医師派遣
○情報通信技術(IT)による診療支援等
(6)診療報酬における適切な評価
(7)需給調整機能の強化と働き方の多様化への対応
○マッチングの推進、仕事と育児を両立できる就労環境の整備
○女性医師バンク(仮称)事業の創設等
(8)医師の業務の効率化
○医療関係職種や事務職員との役割分担と連携等
(9)その他
○へき地等における人員配置標準の特例等
途中同年7月に中間報告を取りまとめ、都合15回の会議を経て平成18年7月28日に報告書を公表した。
報告書はマクロ的視点の将来の医師需給見通しを前提に、医師の厳しい職場環境、偏在等を踏まえた当面の対策についても提言している。とりわけ、病院勤務医の勤務環境の改善、病院と診療所の役割・関係の整理などによらねば、全体としての医師数は充足するとしても、国民の求める質の高い医療を安定的に提供することは困難としている。
平成34年(2022年)の医師需給の均衡は別として、今後の対応の基本的考え方として、
ⅰ.地域に必要な医師の確保と調整
ⅱ.地域の中核的な医療を担う病院の位置付け
ⅲ.病院への持続的勤務を可能とする環境の構築
ⅳ.病院の入院機能特化等による生産性の向上
ⅴ.診療所の外来機能強化による病院への負担軽減
ⅵ.専門診療と診療科・領域別の医師養成の在り方の検討
ⅶ.医学部定員の暫定的な調整
などの施策を提言している。
②平成 18 年8月 31 日
「地域医療に関する関係省庁連絡会議」は平成 18 年8月 31 日に第 10 回会議を開催し、地域間、診療科間あるいは病院・診療所間における医師の偏在問題に取り組むための「新医師確保総合対策」を取りまとめた。その対策は「新医師確保総合対策のポイント」にあるとおり、短期的・長期的対応に分けられ、とりわけ短期的対応については平成19年度予算の概算要求への案件となっている。
【新医師確保総合対策のポイント】
【短期的対応】
平成19年度概算要求への反映
○医局に代わって、都道府県が中心となった医師派遣体制の構築
○国レベルでの病院関係者からなる中央会議設置により都道府県の医師派遣などの取り組みをサポート
○小児救急電話相談事業(短縮ダイヤル「#8000」)の普及と充実
→軽症患者の不安解消・病院への集中緩和
○小児科・産科をはじめ急性期の医療チームで担う拠点病院づくり
→集約化・重点化を都道府県中心に推進
○開業医の役割の明確化と評価
→軽症患者の不安解消・病院への集中緩和
○分娩時に医療事故に遭った患者に対する救済制度の検討
→無過失責任保険の創設
【長期的対応】
○医学部卒業生の地域定着
→地域枠への奨学金の積極的活用
→医師不足深刻県における暫定的な定員増
→医師不足の都道府県への自治医科大学の暫定的な定員増
第Ⅱ章 日本医師会の対応
1.日本医師会の医師確保対策
「医師の需給に関する検討会」が平成 18 年7月 28 日に報告書を提出したのを受けて、「地域医療に関する関係省庁連絡会議」が平成 18 年8月31 日に「新医師確保総合対策」を取りまとめたのは前述のとおりである。日本医師会はこれら関係省庁による医師確保対策とは別に、日本医師会ゆえに実施可能な対策を独自に取るべきとして、平成 18 年 10 月 17 日に「日本医師会による医師確保に関する見解」を公表し、その実行に向けて行動を起こしている。
この日本医師会の医師確保に関する対策は、本委員会とは別に日本医師会として検討されているものであるが、本委員会の医師確保に関する提案にとっても重要な位置付けになるため、この章において紹介する。
日本医師会による医師確保に関する見解
日本医師会
平成 18 年 10 月 17 日
このたび日本医師会では、喫緊の課題である医師確保問題への対策をまとめました。
医師偏在・不足の原因は、国による永年にわたる医療費抑制政策の結果です。
日本医師会として取り組む対策で主なものは、下記のとおりです。また、現在作成している「医療と介護のグランドデザイン」(仮題)でも、中長期的な視点に立った医師偏在を取り上げる予定です。
今後、これらの対策をはじめ、様々な取組みや提言を行って問題解決にあたる所存です。
Ⅰ.コンセプト
・安全で良質な医療を平等に提供する体制の確保:へき地医療の確保
・勤務医の確保:特に外科系を中心とした救急医療の確保
・かかりつけ医機能の充実:診療所と病院との機能分化と連携
・医師会活動の強化:地域医療の充実、安定した医療提供体制
Ⅱ.主な対策 (日本医師会として取り組むもの)
■ ドクターバンクのネットワーク化
・医師の就職の情報提供および斡旋を目的とした無料紹介制度
・経験豊富で意識の高いベテラン勤務医の活用(定年退職後の再就職等)
・各医師会のドクターバンク間の連携
・全国的なネットワーク
■ 女性医師バンクの創設、実施
・今年度の女性医師バンクを中心とした厚生労働省「医師再就業支援事業」の受託に向け、現在最終調整中。
・すでに職業紹介事業の許可申請をしており、本年度中の事業開始を目指しているところ。
■ 地域医療のデータベース化
・各地域の医療需要・供給の把握、全国的な調査・把握、需給・偏在の将来予測
・勤務医の就労環境、勤務時間・内容の把握、臨床研修やいわゆる後期研修の現況
・住民・患者の意識、受療行動
・好事例・問題事例の汲み上げ、紹介システム(地域医師会→日医→地域医師会)
注)上記は、平成 18 年 10 月 17 日に日本医師会の定例記者会見において公表した資料からの引用である。
2.日本医師会の対策への委員会の見解
特定地域と診療科の医師の偏在を生む結果となった原因は、「第Ⅰ章 医師需給問題のこれまで」にあるとおり、国が医師の需給をマクロ的視点に重点を置き、しかも、需要が供給を生むとして、医療費抑制重視の観点で医師の需給問題に対峙してきたことは否定しがたい事実である。そこで、日本医師会は平成 18 年8月 10 日地域医療対策委員会を設置し、特定地域と診療科における医師不足の検討を委ね、本件に関する委員会の意見を聴取しつつ、前記のとおり、この喫緊の課題である医師確保策について日本医師会としての見解を公表したものである。
国はバブル経済崩壊以来、従来にも増して、財政的見地のみから国民医療費の圧縮を図ってきた。これは2年毎の医療費改定の推移を見れば一目瞭然である。日本医師会が、医師偏在・不足の原因を、「国による永年にわたる医療費抑制政策の結果」と断じたことは当然のことといえる。したがって、平成 18 年 10 月 17 日に日本医師会が独自に取り組む対策として公表した「日本医師会による医師確保に関する見解」を本委員会は支持するとともに、積極的にその対策に協力するものである。
また、日本医師会の対策は日本医師会としての立場で行い得るものである。そこで、「第Ⅲ章 委員会の提言」では本委員会としての立場からの意見、提言等を行うものである。
第Ⅲ章 委員会の提言
現在起こっている医師確保の問題は、主として、医師の偏在と捉える。確かに、特定の医療機関や診療科の局面においては医師不足と表現できるが、この問題を総合的に捉えた時、やはり、偏在と捉えることが適切と考える。また、ただ単に医師数を増やすことが医師確保の問題解決とはなり得ないことも事実である。
現在の医師不足・地域偏在・科の偏在といっても各都道府県によって事情は異なっており、又各都道府県内においても二次医療圏毎に大きなバラつきがあるが、勤務医の問題が主たるものである。今後は医師会、行政、大学、公的医療機関、地域の医療機関が入った都道府県医療対策協議会が中心となり、都道府県単位、又は二次医療圏単位で医師派遣体制を構築して行くことになると思われるので、医師会もこれに積極的に関与して行く必要がある。国においても地域医療支援中央会議が設置され、医師確保に関する国や都道府県等における取り組みを論議することになっている。女性医師の増加傾向は今後も続くとみられる。女性医師は結婚、出産、子育てを機に離職することが多く、再就業のための教育システム、離職防止のための託児所の設置、延長保育、病児保育等の受け皿づくりが緊急の課題である。
その他、患者の過度の専門医志向の是正の啓発活動、各地の事情に応じて病院をオープン化し開業医師を活用して行くこと等が、一般的事項として進めなければならないと考える。
以下、委員会で議論された個別の項目について述べる。
ア)研修医の地域偏在
新たな臨床研修制度の発足は、各地における医師供給体制を根底から変える引き金となった。新卒の医師は、大学以外に臨床研修の場を求める傾向が強くなっており、一部の大学を除いて大学病院においては若手医師が減少し、地域の医師供給要請に応じることが困難な状態になっている。
その結果、地方の中小都市の病院では「医師不足」が深刻化し、病院機能を縮小せざるを得ない状況も出て来ている。この傾向は、都道府県庁所在地以外の二次医療圏において、より顕著となっている。
また、新たな臨床研修制度は、地方から都会へ研修医を集中させる結果となったとの意見もある。その一つの要因は、卒業生の数に対して 30%増しとなっている研修病院のポストの数にあるといわれている。
そこで卒業生の数と研修病院のポスト数を同じとし、さらに二次医療圏毎に人口や医師の過疎程度等を加味して地域枠を設定し配分すれば、研修医の地域偏在は解消されるものと思われる。その際には、研修プログラム、指導医等の研修病院の指定要件を厳格に設定する必要がある。
イ)各大学の地域定着の推進
既に各地で行われている卒後の地域定着を条件とした奨学金制度(奨学金制度には功罪あるが、それについて議論の余地がある)、あるいは医学部入学時の地域枠の拡大の拡充については、今後とも継続して実施されるべきである。また、地域枠において、目的意識がはっきりしており定着率が高いといわれている学士入学(社会人入学)枠の拡大を考えるべきである。
ウ)ドクターバンクの効果的な運営
今後は、ドクターバンクの効果的な運営が一層重要である。ドクターバンクはこれまで多くの県で設置、運営されてきたが、マッチングについては大きな成果を上げてきたとは言い難い。ドクターバンクは医師の職業的特異性からみても他職種からは判断困難な点が多いと思われるので、医師会を中心に運営すべきである。
その効率的運営のためには、単に需給に任せるのではなく、担当理事が域内の事情を聴取し積極的にマッチングに動くべきである。
また日医は、各県のドクターバンクをネットワーク化し、ドクターバンク間の連携を促進するシステムを構築すべきである。特に、女性医師、シルバードクターの再就業をお願いし、積極的に活用する必要がある。
エ)診療科の偏在対策
国は、産科・小児科の集約化・重点化の検討を進めるよう都道府県に強く働きかけている。当面、産科、小児科については二次医療圏単位での集約化・重点化を考えることは止むを得ない。しかし、集約化・重点化に対する捉え方は、地域の事情によって異なるものである。集約化・重点化を検討することで地域の現状とあるべき姿を再認識し、関係者が共通の認識を持つことは重要であるが、机上の空論でない実効性を伴う方向を導き出すことは容易ではない。
小児科については短期的視点に立てば、従たる標榜として小児科を掲げた開業医師の研修事業も地域によっては有効である。同時に患者の過度の専門医志向を是正する啓発活動も重要である。小児救急電話相談事業(#8000)にも地域の事情に応じて積極的に協力することが必要である。
また、今後医師を志す者に対しては、医学部卒前卒後教育の中で医師としての使命感を養わせるとともに、各科の魅力、社会的重要性について涵養することが重要である。さらに、卒後の地域定着を条件とした奨学金返還の免除も考慮に入れるべきである。
オ)病院のオープン化対策
医師確保対策として、現在ある医療資源を有効に活用していくことは重要で、医療機関の連携、地域医療における病院と診療所の連携、とりわけ病院のオープン化は必要不可欠である。病院のオープン化による医療機関連携体制の構築を地域における医師確保のひとつの方策と位置づけて、地域医師会が音頭をとって二次医療圏単位で主要病院のオープン化の検討をすすめていくべきである。
また、医師会共同利用施設のひとつである医師会病院については、これまで地域医療の活動の拠点として、かかりつけ医と連携しつつ地域の医療に貢献してきたことは異論のないところである。医師会病院が地域の実情に即した医療連携の様々な形態を模索し、公的病院やその他の民間病院に対する病院オープン化のモデルとなることは有益なことである。
カ)地域住民・患者との相互理解
医師会が医師確保対策を推進するにあたっては、地域の住民・患者に現在の医師偏在の問題に理解を求めることが必要である。地域住民・患者に率先して医療の抱える問題を自らのものとして捉えてもらうことにより、各地域が直面している産科医療、小児医療、医療全般の問題などへの対策が効果を上げていくものと思われる。
これは従来から各医師会が日頃の活動の中で取り組んできていることであるが、今後の医師会活動においては、対住民施策として重要な位置を占めるものと考える。
キ)医師不足地域対策
医学部卒業後の新医師臨床研修制度の研修終了後の一定期間内に、へき地や医師不足地域での勤務の義務化を考慮する。
以上のような議論が成された。
本委員会は医師不足・偏在問題に関して議論し、この答申をまとめたが、過去からの経緯が生んだ現状に対して、限られた時間内で即効性のある解決策は見出せなかった。
今後、本委員会としては、病院のオープン化、女性医師をめぐる諸問題、地域医療連携クリティカルパス等の問題についても検討し、その中で医師偏在の対策も継続して議論していく予定である。
なお、次章「おわりに」において、この問題に対する率直な意見を述べて本報告書を終える。日医執行部におかれては本報告書を参考とされ、今後の活動に反映されることを希望する。
おわりに
この中間報告により、我々は医師の確保問題に対する処方せんを提示したが、それには緩やかな効果はあったとしても、現実的に考えればこの問題に対する即効的効果のある特効薬とはなりえないことは認識している。そして、対策が机上における計画通りに動くことなどは稀であることも覚悟している。これらの対策を実施するに当たっては、医師や行政などの供給者側の視点からではなく、あくまでも患者という需要者側の視点から安全で良質な医療を確保するという姿勢が重要で、試行錯誤を恐れずに、地道に進めていかなければならない。
われわれが忘れてはならないのは、形あるものを一度壊してしまうと、それを元に戻すのは容易ではないということである。その端的な例が英国の医療制度といえる。サッチャー政権下による医療費抑制策がブレア政権下では深刻な問題を生ぜしめ、ブレア政権が急遽政策転換をして医療への多額の予算投入を図っているが、一旦壊れた医療供給体制は簡単には元に戻らないのが実情のようである。
現在の医師の確保問題を放置すれば、日本の医療提供体制が崩壊に向かうことは誰もが疑いを持たないものである。何はともあれ、国、都道府県、市区町村、大学、医師会、病院団体などの関係者が都市と地方、また、都市部と郊外、地方都市と郡部などのそれぞれの事情や地域性を考慮に入れて、当事者意識を共有しながら十分な連携を図りつつ、施策の実行に取り組むことが重要である。さらに、国民にも医療を自らの問題として捉え、自らの責任で国民皆保険制度を守ることを働きかける必要がある。
そして、地域医療対策委員会の中間報告書として医師確保対策をまとめつつ素直に思うことは、現在、我々が目の当りにしている医師偏在という事象は過去の結果ということである。すなわち、厚労省による永きに渡る過去の政策の積み重ねとして現れた結果を、今、われわれは見ているに過ぎないのである。関係者がこのことに対する認識を十分に持ち、さらに反省しない限りは問題の根本的な解決は見出せないであろう。われわれ地域医療対策委員会委員は何よりも先に、医療を守り、国民・患者に貢献することを念頭に置いているのであって、厚労省の過去の施策が誤りであったと責めているのではない。
これらの問題の本質は何処にあるのか。それは、事象として現れる各問題への対策や戦術はあっても、問題解決を総合的に図る戦略がなことにあると思われる。厚労省には数多くの検討会、研究会があり、その検討会、研究会の報告を基礎として各問題に対する解決策を練っている。しかし、細分化されたテーマごとに検討会、研究会を設置して、寄木細工のような施策を行っても、現在の複雑な社会に対応しきれるはずもない。細分化されたテーマを個々に掘り下げて検討する必要はあるが、それを有機的に結び付ける機能、核となる組織も必要なことを忘れてはならない。場当り的な問題解決あるいは、時間とともに形を変えた問題が発生するといったいたちごっこを避けるためにも、全体を統括する司令部・司令塔が必要なことは否定しがたい。この必要性を認識し、この設置を早急に行わない限り、医師の確保問題も他の重要問題も根本的な解決は望むべくもない。