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大淀事件 09 資料 / 産經新聞時系列報道

Posted by guideboard on 2007/07/03/Tue

» 大淀事件 09 ( 20061023 / 13:51 )

産經新聞 2006.10.22 朝刊

「判断、処置ミスない」
奈良県産婦人科医会が声明
問題の深さ浮き彫り

大淀病院の原育史院長 ( 63 ) が 17 日の会見で産科医の判断ミスを認めたが、奈良県医師会の産婦人科医会は 19 日の臨時理事会で「主治医の判断や処置にミスはなかった」との結論をまとめた。搬送先がすぐにみつかれば助かったのではないか -。遺族が医療ミスを疑うのも、ある意味当然のことだろう。しかし、現場の医師の抱える現状や診断の難しさを考慮に入れると、問題の深さが浮き彫りになってくる。

医師の負担限界

「奈良が危ない」 -。近畿圏の産婦人科医の間では以前から奈良県の産科医療の危機的状況は周知の事実として言われていた。同県では産科医 1 人あたりが扱う分娩数は年平均 163 件と全国で 6 番目に多い。2 年前に 17 施設だった県内の分娩可能な病院は現在 12 施設となり、残された病院では分娩数が急増、医師の負担増が心配されていた。

さらに今年 3 月、大和高田市立病院の産科医が業務上過失致死容疑で書類送検された。同病院は「医療ミスはなかった」としているが、「医師の負担が限界に達している」として、新たな分娩受け付けを同市と周辺 3 市 1 町の住民に制限。周辺地域への影響が懸念されていた。

診断の難しさ

大淀病院の妊婦死亡は、この 5 カ月後の 8 月に起きた。原院長は事案が発覚した直後の今月 17 日の会見で、「 CT ( コンピューター断層撮影法 ) 検査をしていれば脳内出血と診断できたと思う。脳外科を優先して高次病院を探すことも可能だった」と診断ミスを認めた。しかし、産婦人科医の間では「あのケースなら、自分も同じ診断をした」との声が少なくない。

産婦人科医によると、若い妊婦に意識喪失があったとき、まず疑うのは子癇発作で、脳出血を想定することはほとんどないという。また、たとえ脳出血と分かっても妊婦ということもあり、手術をするには産科医だけでなく、小児科医、麻酔科医、脳外科医などの協力が必要になる。午前 2 時という時間帯にこれだけのスタッフをすぐにそろえられる病院は限られる。

奈良県医師会の産婦人科医会もこのケースをめぐって 19 日に臨時理事会を開き、「主治医の判断や処置にミスはなかった」との結論をまとめた。ある病院幹部は「医師会が積極的にこんな声明を出すのは珍しい」とし、産科医不足に対する危機感が高まっていることを指摘する。

体制不備を放置

「お産で死亡」は、今の日本でほとんどないように思われているが、実際は年に 60 〜 70 人が死亡している。ただ、日本産科婦人科学会の調査では、死亡した妊産婦の約 4 割が「救命できた可能性があった」との結果が出ており、医療体制の不備などで命を落としている人がいるのも事実だ。

奈良県医師会産婦人科医会の平野貞治医会長らは会見で、厚生労働省が都道府県単位で 19 年度までに整備を要請している「総合周産期母子医療センター」の進捗が、奈良県で遅れている問題を強調。「医療体制の整備は産婦人科医会が 20 年来要望し続けており、放置されてきたこと自体が問題」とし、県に対し一刻も早い整備を要望していく。

安心して産める環境を
奈良・妊婦死亡
「満床というだけで …」
悔やむ夫 搬送体制の整備訴え

奈良県大淀町の町立大掟病院で 8 月、同県五條市の高崎実香さん ( 32 ) が分娩中に脳内出血で意識不明となり、19 病院から転院を断られた末、搬送先の病院で後日死亡した問題は、実香さんの家族らの深い悲しみとともに、産科をめぐるさまざまな課題を浮かび上がらせた。出産現場での医学的判断の難しさ、高次医療を必要とする妊婦に対する転院ネットワークの脆弱さ …。少子化の中、安心して子供が産める環境はつくれるのか、医療現場や行政に投げかけられた波紋は大きい。

「ただ満床という理由だけで …」。最愛の妻である高崎実香さんを亡くした夫、晋輔さん ( 24 ) は涙ながらに悔しさをにじませる。「なぜ治療を早くできなかったのでしょうか」と何度も問いかける。

実香さんは 8 月 8 日午前 0 時 14 分に意識を失った。晋輔さんらによると、意識を失った当初、産科医らは「陣痛による失神」と判断して病室から立ち去った。その後は助産師が 10 分ごとに訪れて実香さんの体を揺さぶるなどしたが、反応はなかったという。

約 1 時間半後、手足が硬く突っ張る強直性のけいれんやいびきを発症した。産科医は再び病室を訪れ、これを妊娠中毒症の「子癇発作」と判断した。あまり見られない症状で、この病院では処置できないため、病院側は搬送先の病院を探し始めた。

実香さんはけいれん発症からほどなく、瞳孔が開いた。脳の異状を疑った内科医は病院内に施設がある CT 検査の必要性を訴えたが、結局、検査は行われなかった。

「満床」を理由に搬送先の病院はなかなか決まらなかった。ようやく約 60 キロ離れた国立循環器病センター ( 大阪府吹田市 ) への搬送が決まったのは、実香さんが呼吸困難に陥ったのと同じ同 4 時半ごろだったという。

家族はこの間、CT 検査を行うよう訴えたが、聞き入れられなかった。晋輔さんの父、憲治さん ( 52 ) は「私たちの訴えを聞いてくれていれば、ほかの病院の対応も違ったのではないでしょうか」と悔やむ。

実香さんが意識を失ってからけいれんを起こすまでについて、晋輔さんは「後で知ったのですが、医師はこの間、仮眠室で休憩していたといい、病院側の対応はあまりにつらかった」と怒りの声を上げる。

家族には、大淀病院に対する憤りの一方、奈良県内の妊婦らを対象とする高度医療体制・施設整備の立ち遅れに対する無念さも強い。

「搬送システムをきちんと構築してほしい」。憲治さんは切実に訴える。「大淀病院は、地域の中核病院としてみんなが信用していた。県は ( 厚生労働省が打ち出す)周産期医療ネットワークを一日も早く整備してほしい」。晋輔さんも「実香の亡くなった意味として一刻も早く改善してもらいたい」と話した。

妊婦死亡問題の主な経過

8 月 7 日
9:20 高崎実香さんが分娩誘発のため大淀病院に入院
9:40 分娩誘発剤を投与 ( 以降、1 時間おきに 6 回 )
夕方 陣痛が始まる
8 月 8 日
0:00 「こめかみが痛い」と頭痛の訴え
0:14 突然意識消失。内科医、産科医呼ぶ。陣痛による失神と判断
1:37 強直性のけいれん発作、いびきを発症。産科医は子癇樽発作を疑い、そのための薬を投与
1:47 産科医が家族に「子癇」と告げる
1:50 県立医大付属病院に受け入れを依頼 ( 以降、医大病院を含め 19 病院に打診 )
2:00 瞳孔が開く
2:15 内科医が、「脳に異状が起きている可能性が高い」と CT 検査を主張したが、結局行わず
2:30 家族に「搬送先を探している」と説明。内科医から脳の異状の疑いを聞いた家族は CT 検査を行うよう主張したが行われず
4:30 呼吸困難に。搬送先が約 60 キロ離れた国立循環器病センター ( 大阪府吹田市 ) に決定
4:50 救急車で搬送
6:00 国立循環器病センターに到着
8 月 16 日
15:15 高崎さんが脳内出血で死亡
9 月 14 日 奈良県医師会産婦人科医会の理事会で、緊急転院が必要な妊婦については他診療科にも受け入
れを打診することで合意
10 月 17 日 一連の問題が発覚
10 月 19 日 同医会が理事会で「大淀病院側の判断に問題はなかった」との見解で一致

高崎さんの夫、晋輔さんと長男の奏太ちゃん。「実香の命をもっと大切にしてほしかった」と話す = 奈良県三郷町

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