大淀事件 07 資料 / 各社報道 20061018 – 20
Posted by guideboard on 2007/07/02/Mon
» 大淀事件 07 ( 20061020 / 21:04 )
asahi.com 2006.10.20
意識消失の妊婦、1時間以上放置 奈良・町立大淀病院
奈良県大淀町の町立大淀病院で8月、分娩(ぶんべん)中に重体となった妊婦(当時32)が県内外の19病院に搬送を断られ、出産後に脳内出血で死亡した問題で、妊婦は意識を失った後、約1時間20分も治療を受けずに放置されていたことが、朝日新聞が入手した同病院の看護記録でわかった。主治医らは単なる失神と判断し、病床を離れていた。その後の激しいけいれんについても、主治医は妊娠中毒症患者が起こしやすい「子癇(しかん)」と診断。瞳孔の拡大など子癇とは異なる症状も出たが、脳を検査しなかったという。
看護記録は、助産師が作成した分娩経過記録(パルトグラム)と看護日誌。それらによると、妊婦は出産予定日が過ぎた8月7日午前に入院したが、翌8日午前0時、「こめかみが痛い」と訴えて嘔吐(おうと)し、約15分後、「意識消失」した。当直の内科医が診察し、「失神でしょう」。主治医もその意見に従い、妊婦のそばを離れたとされる。
だが、午前1時37分、妊婦は意識が戻らないまま手足が棒のように硬く突っ張る「強直性のけいれん」を起こし、「瞳孔開大」となった。駆けつけた主治医は、子癇発作に有効とされる薬剤を投与。緊急の帝王切開をするため、搬送先の病院を探し始めた。
同4時半、妊婦は「呼吸困難」となり、酸素を送り込むための「挿管開始」。20分後、救急車で大阪府吹田市の国立循環器病センターに向けて搬送されたという。
この看護記録を見た日本産科婦人科学会の専門医は「意識を失った患者には医師が付き添い、原因を調べなければならない。けいれんが起きるまで1時間以上放置したのは信じられない行為」と驚く。
さらに、「子癇の場合、妊婦のケースとは逆に瞳孔が狭まる傾向があり、手足が大きく震えるけいれんが伴う」と主治医の診断に疑問を呈し、「子癇と違う症状が出た時点で脳疾患を強く疑うべきだった。けいれんが収まった時点でCT(コンピューター断層撮影)検査ができたし、その時点で脳内出血が判明していれば、ここまで受け入れが拒否される事態にはならなかったのではないか」と指摘する。
妊婦の死後、遺族が主治医に、再び病床に戻るまでの1時間余、何をしていたのかを尋ねたところ、「仮眠室で寝ていました」と告げられたという。
大淀病院の横沢一二三(ひふみ)事務局長は「警察の捜査の関係もあり、現段階ではコメントできない」と話した。
—–
毎日新聞 2006.10.20
奈良妊婦死亡:搬送先探し、診断不正確で遅れか
奈良県大淀町立大淀病院で意識不明となった妊婦が搬送先の大阪府内の病院で死亡した問題で、同県立医科大病院(橿原市)から搬送先を探すよう求められた府立母子保健総合医療センター(同府和泉市)が、府内の7病院に受け入れを拒否されていたことがわかった。同センターには、妊婦が子癇(しかん)発作であると伝えられたため、それに対応できる病院を探したと証言している。同センターは「脳内出血と正確に診断されていれば、別の病院に打診し、もっと早く搬送先が見つかったはず」と指摘。大淀病院で「脳内出血」と診断されなかったことが、転送先の決定を遅らせた可能性がさらに強まった。
この問題では、県立医大病院を含め、少なくとも奈良県内で2カ所、大阪府内で17カ所の計19病院が受け入れを拒否。これまで県立医大病院が大半の病院に打診したとみられていたが、一部を同センターが担っていたことになる。
同センターの末原則幸・産科部長によると、8月8日午前2時半ごろ、大淀病院の依頼で搬送先を探していた県立医大病院から受け入れ打診の電話があった。「頭痛があり、子癇発作らしい」との内容だったが、脳内出血の可能性を示す症状の説明は一切なかった。同センターは満床だったため、要請を断った。
医大病院から「一緒に探してほしい」と求められたため、府内で受け入れ先を探した。しかし、満床や人手不足などの理由で7病院に拒否され、同4時半ごろになって、国立循環器病センター(同府吹田市)に決まった。妊婦は同6時ごろ到着し緊急手術を受けたが、8日後に死亡した。
大淀病院は、妊婦を子癇発作と診断した。しかし、専門家によると、子癇発作は、けいれんの後に脳内出血を起こすことがあるが、脳内出血の場合、一般的に頭痛の後に意識がなくなり、けいれんする。妊婦は頭痛を訴えた後に意識不明に陥り、けいれんを起こした。
大淀病院では内科医が、脳内出血かどうかを診断できるCT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科担当医が受け入れなかったという。
末原部長は「脳内出血で母親の命が危ないと分かっていれば、産科より救命救急センター、大学病院を中心に搬送依頼した。搬送先が決まるまで待つ時間があるなら、CTを撮る時間もあったのではないか」と指摘している。
【根本毅】
毎日新聞 2006年10月20日 15時00分
———-
共同通信 2006.10.20
病院の判断「問題ない」 妊婦死亡で県産婦人科医会
奈良県大淀町立大淀病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明になった妊婦が、19病院に次々と受け入れを断られた末に大阪府内の病院で死亡した問題で、同県産婦人科医会は19日、臨時の会議を開き、大淀病院の判断に問題はなかったと確認した。
再発防止のため、今回受け入れを打診しなかった県内の病院にも救急時の協力を要請するとともに、奈良県に対し救急体制の整備を申し入れることなどで合意した。
会議では大淀病院の院長から事情を聴いた同医会の平野貞治(ひらの・さだはる)会長が経過を報告。その結果、妊婦の異常を分娩時のけいれんと診断した大淀病院の対応に問題はなかったとの意見で、大筋で一致したという。
大淀病院によると今年8月、分娩中の高崎実香(たかさき・みか)さん(32)が頭痛を訴え意識不明になったが、主治医はけいれんと判断しコンピューター断層撮影装置(CT)にかけなかった。妊婦は脳内出血で死亡。病院側は17日の記者会見で、脳内出血を疑わなかったことについて「結果的に判断ミスだった」と認めている。
—–
毎日新聞 2006.10.20
「担当医の判断、仕方ない」 奈良県産科医会、病院見解と相違
奈良・妊婦転送死亡:「担当医の判断、仕方ない」 県産科医会、病院見解と相違
奈良県大淀町立大淀病院で分娩(ぶんべん)中の妊婦が急変し、転送先の病院で脳内出血のため死亡した問題で、同県内の産婦人科医でつくる県医師会産婦人科医会は19日、臨時の理事会を同県橿原市内で開いた。平野貞治会長は「患者の状況から担当医が子癇(しかん)と判断したのはやむを得ず、判断ミスと言うには酷。むしろ搬送先が長時間決まらなかったことが問題」と述べた。大淀病院は17日の院長会見で「脳内出血を見抜けず結果として判断ミス」との見解を示していた。
この日は理事10人のうち7人が出席し、平野会長が18日夕、大淀病院の産科担当医から聴いた症状と処置を検討。理事会として「脳内出血との違いは難しいが、失神とけいれんが起こり、血圧が高かったことを考えると、産科医が子癇と判断して処置したことに問題はなかった」との見解で一致した。また、当直内科医とCT(コンピューター断層撮影)を巡るやりとりがあった点についても「院内でかなりの移動が必要なため、搬送を優先させた」との担当医の説明を妥当とした。
産婦人科医会は一方で、転送先の病院が長時間見つからなかった点を重視。「患者様のご冥福を心からお祈りする。会として20年前から周産期医療の整備を行政(奈良県)にお願いしてきたが、現状では十分聞いてもらえていない」とし、近く県に「総合周産期母子医療センター」の設置を急ぐよう要望書を出す方針を決めた。
【青木絵美】
———-
asahi.com 2006.10.18
なぜ起きた 奈良妊婦19病院拒否、死亡
脳内出血を起こした妊婦が搬送先がないまま亡くなっていた——奈良県大淀町の町立大淀病院で重体になった妊婦が8月、19病院に搬送を断られて死亡した問題は、地方の危機的なお産事情を浮かび上がらせた。厚生労働省は都道府県に対し、今年度中に産科医不足に対応するため、産科施設の集約化計画を立てるよう求めているが、その前提さえないのが現状だ。集約化が進めば、合併症があるなどハイリスクの妊婦はより遠方の拠点病院に搬送されることになる。安全性との両立をどうはかるか、課題は多い。
「子どもを産むのも育てるのも、奈良では命がけです」。奈良県桜井市で今年3月に女児を出産した木元友紀さん(35)は言う。出産の1カ月前に静岡県から引っ越してきた。近くの産科病院、診療所すべてで「予約でいっぱい」と分娩を断られ、奈良市内の助産師に頼んで自宅出産した。
奈良県内では分娩(ぶんべん)可能な病院がこの2年間で四つ減り、13カ所になった。診療所と合わせても30カ所しかない。大淀病院と医療圏が重なる県立五條病院(五條市)も、常勤医が確保できず、4月に分娩の取り扱いを休止した。このため、大淀病院でも分娩数が急増。4〜9月の同病院の分娩数は99件で前年比22件増。産婦人科の常勤医は1人しかおらず、病院は月20件までの分娩予約制をとって、負担が過重になりすぎないように調整していた。「ただし、地域にほかに病院がない、里帰り出産が多いなどの状況があり、20件を超えても機械的に断れない」(同病院)。
日本産科婦人科学会の調査によると、昨年12月1日現在の奈良県の産科常勤医数は72人と近畿最少。大阪府612人、京都府の195人と比べて極端に少ない。一人の医師が扱う分娩数は、年平均163件で全国で6番目に多い。一病院あたりの医師数は平均3.4人。厚労省の集約化モデルは「24時間救急対応可能な拠点病院に産科医5人以上を集め、地域の病院・診療所と連携し、30分以内に帝王切開が可能な体制を作る」。だが、県医務課は「医師の絶対数が少なく、モデルにならった集約化は実現できない」という。
厚労省が来年度までに都道府県に指定を求めている「総合周産期母子医療センター」が、同県にはまだない。母子に高度な医療を同時に提供できる母体・胎児集中治療室(MFICU)は県立医科大学付属病院と県立奈良病院に計4床しかなく、出産時に異常が認められた妊婦の搬送先は、県外に頼らざるを得ない。
低体重や障害がある赤ちゃんを診る新生児集中治療室(NICU)も、2年前、小児科医不足から、市立奈良病院で閉鎖され、県内には3病院、40床しかない。早産や多胎などで県外に搬送される妊婦は年50〜80人にのぼる、という。「姫路まで母体搬送したこともある」とある産科医は語る。
同県の産科医らでつくる周産期医療対策ワーキンググループは3月、県に「NICU、MFICUの病床数を確保するため、順次整備を進める」「県立医大付属病院を総合周産期母子医療センターとして整備する」などと提言した。県医務課は「増床は財政的に難しく、医師や看護師の増員も、めどが立たない」と苦慮する。
産科医不足は奈良県からの搬送を受け入れる大阪府も同じだ。奈良県立医大付属病院からの依頼を受け、大淀病院の妊婦の搬送先を探した大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長は「母体に脳出血がある場合、NICU、脳外科、麻酔科、ICU、産科の五つがそろった病院でないと受け入れが難しい。そんな病院は大阪にも5、6カ所しかない」と指摘。その上で、「常勤の産科医が7、8人いて、夜勤も複数で担当でき、母体の異常に対応できる診療科もある病院を、医療圏ごとに作らないと、今回のようなケースは救えないだろう」と話した。