大淀事件 / 毎日新聞資料
Posted by guideboard on 2007/07/02/Mon
毎日新聞 奈良県版 2006.10.22
支局長からの手紙:遺族と医師の間で /奈良
今年8月、大淀町立大淀病院に入院した五條市の高崎実香さん(32)が容体急変後、搬送先探しに手間取り大阪府内の転送先で男児を出産後、脳内出血のため亡くなりました。
結果的には本紙のスクープになったのですが、第一報の原稿を本社に放した後、背筋を伸ばされるような思いに駆られました。
「もし遺族に会えてなかったら……」
というのは、今回の一件はほとんど手掛かりがないところから取材を始め、かなり時間を費やして事のあらましをどうにかつかみました。当然ながら関係した病院のガードは固く、医師の口は重い。何度足を運んでもミスや責任を認めるコメントは取れませんでした。なにより肝心の遺族の氏名や所在が分からない。
「これ以上は無理」
「必要最低限の要素で、書こうか」
本社デスクと一時はそう考えました。
そこへ基礎取材を続けていた記者から「遺族が判明しました」の連絡。記者が取材の趣旨を説明に向かうと、それまでいくら調べても出てこなかった実香さんの症状、それに対する病院の対応が明らかになりました。それがないと関係者にいくつもの矛盾点を突く再取材へと展開しませんでした。
さらに、患者、遺族は「名前と写真が出ても構わない」とおっしゃいました。「新聞、テレビ取材が殺到しますよ」と、私たちが気遣うのも承知の上の勇気ある決断でした。
情報公開条例や個人情報保護法を理由に県警、地検、県、市町村などの匿名広報が加速するなか、記事とともに母子の写真、遺族名が全国に伝わり、多くの反響が寄せられています。それは実名と写真という遺族の「怒りの力」によるものに他なりません。
支局の記者たちも、ジグソーパズルのピースを一つずつ集めるような作業のなかで、ぼやっとしていたニュースの輪郭がくっきりと見えた感覚があったに違いありません。手掛かりある限り、あきらめないで当事者に迫って直接取材するという基本がいかに大切で、記事の信頼性を支えるか。取材報告を読みながら、身にしみました。
改めて、お亡くなりになった高崎実香さんのご冥福をお祈りします。
【奈良支局長・井上朗】
hogaraka@dream.com
毎日新聞 2006年10月22日
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毎日新聞 奈良県版 2006.10.22
鹿笛:大淀町立大淀病院から緊急転送が難航した末… /奈良
大淀町立大淀病院から緊急転送が難航した末、妊婦が死亡した問題で、亡くなった五條市の高崎実香さん(32)の遺族を取材した。病院の対応を憤って語った夫晋輔さん(24)は、実香さんの話になると涙が止まらず、「いつか、笑える日が来るのかな……」と声を絞り出した。
問題発覚以降、「以前から県内でのお産は不安だった」と読者の声が届いている。合計特殊出生率が全国ワースト2で、結婚支援などで少子化対策へ力を入れているとPRしていた奈良県。しかし、総合周産期母子医療センターの整備は遅れ、安心して産める環境づくりは「後回し」だった。失われた命の責任を、行政側も負っている。
(中村)
毎日新聞 2006年10月22日