Guideboard

大淀事件 01 ( 20061019 / 01:11 )

Posted by guideboard on 2007/06/26/Tue

本記事は、2006 年 10 月 19 日、午前 1 時 11 分、http://sword.txt-nifty.com/guideboard/ にオリジナルの記事 ( 奈良産科転送事件 ) がアップされたものである。原典は削除された。


キーワード
奈良県、大淀病院、産科、子癇、転送、搬送、放置、脳内出血、受け入れ拒否、死亡、医療崩壊、三大事件、医療事故、医療訴訟、刑事訴追

また、悲しい事件だ。

この事件で亡くなられた方、家族をなくされた方々の悲痛な心中は察するにあまりある。まことにお気の毒に思う。現場の誰かが悪いからと決められない、何ともやるせない事件だ。

毎日新聞 2006.10.17
分べん中意識不明:18病院が受け入れ拒否…出産…死亡
» 奈良産科転送事件資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/10/post_e239.html

しかし、この患者さんを受け入れることができなかった医療機関まで、刑事訴追の可能性が出て来た。

奈良県では、つい先日の 6 月、大和高田市立病院産婦人科の事件が起こったばかりだ。日本は、国を挙げて、医療制度の不備、医師と医療の限界なのに、民事訴訟だけでなく、刑事訴追で医師を断罪する時代になった。

自院の体制では必要な診療ができない、ならば早期に他院へ転送すべし。これが今までの判例であり、各医療機関は、昔は許されていた「チャレンジ」に賭ける事はなくなり、救急医療や高次医療を避けるようになった。福島県立大野病院事件での片岡康夫福島地検次席検事の次の言葉、「一か八かでやってもらっては困る」。これもそれを踏襲するものだ。

ところが、過去の判例にも、刑事訴追に走った検察の意見にもまったく反する今回の警察の動きは何なのだろう。

今年は、医療崩壊が広く国民に知れ渡るとともに、これまで崩壊を防ぎ支えてきた最後の柱が折られ、崩壊が加速した、いわば医療崩壊元年なのだ。

福島県立大野病院事件、大和高田市立病院事件、そして本件の三つの事件がその引き金となったといえよう。
» 産婦人科医不当逮捕事件 http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/02/post_f736.html
» 産婦人科医不当送検事件 / 奈良 http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/06/__31ea.html

以下の議論に必要な主要な報道を 2 件、全文で引用する。その他の報道は、書庫を参照の事。また、その後に、某所複数箇所で掲示されていた、最も当事者に近いとみられる情報を載せる。マスコミ報道と対比して欲しい。

毎日新聞 2006.10.17 ( m3 )

病院受け入れ拒否:意識不明、6時間“放置” 妊婦転送で奈良18病院、脳内出血死亡

◇手術は60キロ先の大阪
奈良県大淀町立大淀病院で今年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明に陥った妊婦に対し、受け入れを打診された18病院が拒否し、妊婦は6時間後にようやく約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に収容されたことが分かった。妊婦は、脳内出血と帝王切開の手術をほぼ同時に受け元気な男児を出産したが、約1週間後に死亡した。遺族は「意識不明になってから長時間放置され、母体の死亡につながった」と態勢の不備や病院の対応を批判。大淀病院側は「できるだけのことはやった」としている。過疎地の産科医療体制が社会問題化する中、奈良県や大淀町は対応を迫られそうだ。(31面に関連記事)

◇県外搬送常態化

遺族や病院関係者によると、妊婦は同県五條市に住んでいた高崎実香さん(32)。出産予定日を過ぎた妊娠41週の8月7日午前、大淀病院に入院した。8日午前0時ごろ、頭痛を訴えて約15分後に意識不明に陥った。

産科担当医は急変から約1時間45分後、同県内で危険度の高い母子の治療や搬送先を照会する拠点の同県立医科大学付属病院(橿原市)に受け入れを打診したが、同病院は「母体治療のベッドが満床」と断った。同病院産科当直医が午前2時半ごろ、もう一つの拠点施設である県立奈良病院(奈良市)に受け入れを要請。しかし奈良病院も満床を理由に、応じなかった。

医大病院は、当直医4人のうち2人が通常勤務をしながら大阪府を中心に電話で搬送先を探したが決まらず、午前4時半ごろ19カ所目の国立循環器病センターに決まったという。高崎さんは約1時間かけて救急車で運ばれ、同センターに午前6時ごろ到着。脳内出血と診断され、緊急手術と帝王切開を実施、男児を出産した。高崎さんは同月16日に死亡した。

大淀病院はこれまでに2度、高崎さんの遺族に状況を説明した。それによると、産科担当医は入院後に陣痛促進剤を投与。容体急変の後、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の妊婦が分娩中にけいれんを起こす「子癇(しかん)発作」と判断し、けいれんを和らげる薬を投与した。当直の内科医が脳に異状が起きた疑いを指摘し、CT(コンピューター断層撮影)の必要性を主張したが、産科医は受け入れなかったという。

緊急、高度な治療が必要な母子について、厚生労働省は来年度中に都道府県単位で総合周産期母子医療センターを指定するよう通知したが、奈良など8県が未整備で、母体の県外搬送が常態化している。

大淀病院の原育史院長は「担当医が子癇発作と判断して処置した。脳内出血の疑いも検討したが、判明しても対応しようがなく、診断と治療を対応可能な病院に依頼して、連絡を待っていた。ご遺族とは誠意を持って対応させていただいている」と話した。一方、高崎さんの遺族は「大淀病院は、脳外科を備えながら専門医に連絡すら取っていない。長時間ほったらかしで適切な処置ができていれば母体は助かったはずだ」と話している。

【林由紀子、青木絵美】

◇「確認可能なはず」

妊婦が意識を失った場合、子癇発作と脳内出血の差はどう判別されるのか。県立医大の小林浩・産科婦人科教授によると「いずれもけいれんを起こし、普通どちらなのかは判断できない」という。一方、別の産科医は「頭痛があり、妊娠高血圧症候群がないなら、脳内出血を疑うべきだ。病院内にCTがあるなら、確認は可能だったはず」と話す。

遺族は「脳内出血を疑う情報が、転院依頼先の病院に伝わっていれば、次々と断られることはなかったのでは」と訴える。

asahi.com 2006.10.18

奈良県警が業務上過失致死容疑で捜査へ 妊婦死亡問題

奈良県大淀町の町立大淀病院で妊婦(32)が分娩(ぶんべん)中に意識不明の重体になり、大阪府内の病院に搬送後、脳内出血で死亡した問題で、奈良県警は業務上過失致死容疑で捜査する方針を固めた。大淀病院は「死亡にいたるミスがあった」と認めている。県警は同病院関係者から慎重に当時の治療内容などについて聴く方針。

17日に会見した同病院は、ミスの内容として、(1)主治医が、妊婦の意識喪失を失神と判断した(2)妊娠中毒症の妊婦が分娩中にけいれんを起こす「子癇(しかん)」と判断し、脳内出血を見抜けなかった(3)そのためCT(コンピューター断層撮影)を撮らず、脳外科の治療を優先しなかった——などを挙げた。

同病院などによると、主治医が分娩誘発剤を投与した後、妊婦は頭痛を訴え、意識を失った。その後、妊婦の血圧が上昇し、けいれんがひどくなるなど容体が悪化。同病院では対応できなくなったため、他府県の病院に受け入れを打診する間、当直の内科医がCTの使用を助言。付き添っていた家族も頼んだが、主治医は「安静にして受け入れ先が見つかるのを待つ」と聞き入れなかったという。

また、重体となった妊婦の受け入れを拒んだ病院はその後1病院が新たに判明し、計19病院とわかった。内訳は、奈良県の2病院と大阪府内の17病院。

近県の者ですが、詳細な情報を入手しました。

患者さんは予定日超過で入院し、入院当日からPGE2の内服で分娩誘発されていて、当日の午後に服薬を終了、自然に経過観察していたところ、準夜帯から自然陣発したとのことです。ところが、午前0時頃に突然意識消失のような症状が出現したため、産科当直医が院内の内科当直医に診察を依頼し、内科医の診察を受けました。
内科医が対光反射や一部の神経学的所見を診たところ、意識レベルが低い(痛み刺激には反応あり)ものの他の異常所見が無く、また陣痛発作時には産婦が声を上げて痛がるなどしたため、産科医と内科医で「陣痛発作に伴う失神だろう」と判断したとのことです。この際に「内科医がCT検査を行うことを主張したが産科医が拒んだ」などと報道されていますが、両者の間でそんな押し問答のようなやりとりはなかったようです。その時点では血圧は正常で、子宮口も4cm程度開大していたため分娩経過を診ることになり、産科医は当直室に戻ったとのことです。

しかし、その約1時間半後に痙攣発作が生じ、この時点では血圧が180前後まで上昇していたため、産科医が子癇発作と判断し、マグネゾールを静注して奈良医大病院に搬送を依頼ました。ところが、奈良医大の産科病棟が陣痛待機室のベッドまで入院患者が溢れるほど満床であったため受け入れることができず、また、容易に搬送先が見つかりませんでした。大淀病院の産科医の先生はいつでも搬送できるよう、今か今かと「受け入れ先が見つかった」との連絡を待ちわびていたらしく、CT検査ももちろん考えたようですが、(今、患者を動かして再発作を起こしたら母児ともに危険かもしれない)(CT検査に行っている間に搬送先が見つかったと連絡が来るかもしれない)など考えて躊躇されたようです。苛立つ家族に囲まれ、産科医自身も大阪の高次医療機関に数件電話するなどしたようですが、全て断られたとの事でした。最終的に搬送先が見つかったのは、搬送を申し入れてから二時間余り過ぎた後でした。

聞けば聞くほど悲しい内容です。報道では、かなり産科医を悪辣に糾弾しておりますが、このような経過では同情を禁じ得ません。一番の問題は、受け入れるベッドの絶対数が奈良県では不足していることにあるように思います。刑事事件へと進展しそうな気配ですが、このような例が刑事訴追されることを、我々は容認してはいけないと思います。

—– 以上、引用 —–

———-

本事件が抱える重大な要素と私が考えるものについて、列挙する。

1. 本事件で受け入れを断った医療機関にまで、刑事捜査の網がかかる。
2. 本事件の医師の判断は、果たしてミスと呼べるだろうか。
3. 奈良県の救急医療体制は、見かけ程ではない、現場の医師から見ればお粗末な体制しかない。
4. 原育史大淀病院長は当事者である医師個人に責任を押し付けようとしている。
5. 事件が起こってから 2 ヶ月がたっての報道と刑事捜査の開始である。
6. マスコミ報道は真実を伝えていない。タイトルの付け方すら、悪意ある煽動だ。

明日以降、その考えを記録しておく。専門外だから、あくまで、資料を収集した上での感想であるが。

———-

参考リンクを挙げておく。大変参考になる。

18病院が受け入れ拒否(大淀病院妊婦死亡事案) http://www.yabelab.net/blog/2006/10/17-124111.php ( 元検弁護士のつぶやき 2006.10.17 )
前門の虎 後門の狼 http://anesthesia.cocolog-nifty.com/freeanesthe/2006/10/__f8b9.html ( freeanesthe )
奈良県警が業務上過失致死容疑で捜査へ 妊婦死亡問題 http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/10/post_d6f6_2.html ( ある産婦人科医のひとりごと )
分娩中意識不明:18病院が受け入れ拒否…出産…死亡 http://nakaikeiji.livedoor.biz/archives/50746946.html ( 医学教育でのひとりごと )
産科医療の崩壊 http://kenken1997.cocolog-nifty.com/pediatrician/2006/10/post_cb26.html ( 小児がんと生きること )
今ある命も救えない「医療制度改革」、そしてマスゴミの偽善 http://ameblo.jp/shionos/entry-10018473207.html ( 大和ごころ。ときどきその他 )
その日が来たか・・・ http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20061018 ( 新小児科医のつぶやき )

———-

以下、参考資料

大淀事件 01 資料 | 旧 奈良産科転送事件資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/10/post_e239.html
大淀事件 01 資料 2 | 旧 奈良産科転送事件資料 2 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/10/_2_30dc.html
大淀事件 01 資料 3 | 旧 奈良産科転送事件資料 3 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/10/_3_45b7.html
大淀事件 01 資料 4 | 旧 奈良産科転送事件資料 4 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/10/_4_0388.html

過去記事

» 産婦人科医不当送検事件 / 奈良 http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/06/__31ea.html
» 産婦人科医不当送検事件 / 奈良資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/06/__ff27.html

» 産婦人科医不当逮捕事件 44 http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/10/_44_1919.html
» 産婦人科医不当逮捕事件 44 資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/10/_44__ef8a.html
» 産婦人科医不当逮捕事件 16 http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/03/_16_d544.html
» 産婦人科医不当逮捕事件 http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/02/post_f736.html
» 産婦人科医不当逮捕事件資料 http://sword.txt-nifty.com/library/2006/02/post_1232.html


» 奈良の産婦人科医 トラックバック 健康、病気なし、医者いらず
妊婦受け入れ拒絶で調査=業過致死の疑いも奈良県警 奈良県の大淀町立大淀病院で8月、 分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦(32)が 約20病院から受け入れを断られた末、搬送された大阪府内の医療施設で 脳内出血… [続きを読む]

http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-104.html

受信: 2006/10/20 1:47:49

コメント

すごい情報量ですね。
ニュースや新聞からの記事のみでブログを書いた私とは大違いです。
ちょっと反省しています。

TBもさせて頂きました。
今後ともよろしくお願い致します。

投稿 Dr. I | 2006/10/20 1:47:52

http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com

こんにちは、こちらこそよろしくお願いいたします。トラックバック、させて頂きました。

投稿 道標主人 | 2006/10/20 9:00:14

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Connecting to %s

 
Follow

Get every new post delivered to your Inbox.